大規模リコールで学んだ 顧客目線の品質の大切さ
記憶は決して風化させない

 会社がつぶれるかもしれない。そんな不安な毎日を過ごした時期がありました。2009~10年にかけて、トヨタ自動車が大規模なリコール問題に直面した際のことです。当時、私はトヨタの副社長で品質保証を担当していました。

(写真=陶山 勉)

 トヨタ車が「意図せぬ急加速をする」とされ、連日のようにメディアで大バッシングを受けました。クルマの電子制御装置に不具合があり、暴走すると疑われたのです。最終的には米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)の調査で、「電子制御装置に欠陥はなく、急発進事故のほとんどがドライバーの運転ミスである」と結論付けられました。

 しかし騒動の最中では、何を言っても信じてもらえません。私は1970年にトヨタに入社して以来、生産畑でほぼ一貫して品質に携わってきました。複数の工場長も務め、部下たちには「品質は工程でつくりこむものだ」と言って教育してきた。トヨタは品質をずっと大事にし、高い水準を実現してきたという自負を持っていました。