生まれ育った和歌山県新宮市の実家に不思議な写真がありました。セピア色で見にくくなっていますが、西部劇に出てくるような街並みと何人かの男たちが写っています。時は1900年前後、場所は米西海岸のどこか──らしい。確かなのは男の中の一人が私の曽祖父だということでした。私は会ったことがないので分かりませんが。

 紀伊半島の南の端の方にある故郷は陸の孤島。大阪や名古屋につながる鉄道「紀勢本線」の全面開通は1959年と遅く、いまだに東京を見たことがないという人がたくさんいます。そんな土地の曽祖父がなぜ100年以上も前に西海岸にいたのかが不思議でした。

 最近になって昔を知る人に聞いた話では、当時は紀伊半島の南から西海岸に渡る住人が大勢いたのだそうです。出稼ぎの移民ですね。現地で漁業などをやって成功し、自分たちで缶詰工場なども造っていたようです。途中のハワイでもそういう人たちによって現地の漁業が独占されるまでになっていたという話もあります。