2015年10月19日号目次
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Prologue
ルチャ・リブレとトヨタ自動車
メキシコ市、アレナ・メヒコ。年間100試合以上が開催されるルチャ・リブレの聖地では、この日も怒号と歓声がこだましていた。聞けば、観客がリングに罵詈雑言を浴びせかけ、ルチャドール(レスラーのこと)が言葉巧みに観客をあおっている。その光景は、さながら掛け合い漫才のよう。ラッパなどの鳴り物も騒々しく、ひいきのルチャドールがピンチに陥ろうものなら、会場中に地鳴りのようなブーイングが鳴り響く。
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国際通貨基金(IMF)の予測では、メキシコ経済は3%台の経済成長が続く。所得格差が大きいものの、1人当たりGDP(国内総生産)も先進国の目安である1万ドルを上回る。24歳以下が全体の48%を占めるなど人口構成は若く、生産年齢人口が増加する「人口ボーナス期」の入り口に立つ。所得格差が大きく、消費市場の育成がカギだが、ほぼ同じ人口の日本とは異なり、これからの成長が期待できる国だ。
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Part 1 地の利から労働力まで
”最強”の自動車工場
今後、数年で世界中の自動車メーカーがメキシコにほぼ出そろう。米国に隣接する地の利や勤勉な労働力など利点は数多い。北米攻略の上でメキシコをどう位置付けるか、各社の知恵が問われる。
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Part 2 油田開発開放で外資にもチャンス
エネルギー改革という切り札
相次ぐ発電プロジェクトのため、発電関連ビジネスが盛り上がりを見せる。油田開発の外資開放によって、今後は深海油田にビジネスチャンスも見込まれる。原油価格の低迷は誤算だが、未開発の油田の存在は経済成長の切り札になり得る。
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Part 3 跳梁跋扈する麻薬マフィア
のぞかせる”最凶”の素顔
2010年前後、メキシコは世界で最も危険な場所の一つだった。最近でこそ麻薬関連の凶悪犯罪は減少傾向にあるが、いまだ予断は許さない。ポテンシャルの裏にあるリスク。果たして管理可能なのだろうか。
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Epilogue
”米国の工場”が抱える憂鬱
あの時の決断がすべてを変えた。1994年1月に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)。米国、カナダ、メキシコの3カ国で関税の引き下げや金融・投資の自由化などを規定したFTA(自由貿易協定)の嚆矢とも言える存在だ。