2015年7月6日号目次
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PROLOGUE
海外では 重くも暗くもダサくもない
日立製作所が海外で「革新的でエキサイティング」と評価され始めている。「革新性と積極性に欠ける安定企業」という国内での印象とは、正反対のイメージだ。日本人が知る日立の姿は、HITACHIの一部でしかない。
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PART 1
海外で今、 注目される理由
海外の経営者や技術者の多くは、日立が持つ様々な魅力に気付き始めている。「総花的」と言われる膨大な技術資源は、IoT時代に「本物の宝」に変わる可能性が高い。現地で進める先進的な人事や企業統治も、優秀な人材を集める武器になっている。
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日立の活躍が海外で目立つ背景には、まず同社が保有する技術資源がある。博士号取得社員を1000人以上動員し長年蓄積してきたリソースは膨大だが、研究分野があまりに広範なため、国内では「宝の持ち腐れ」と指摘されてきた。しかし、IoT時代が到来すれば、それこそが最大の武器になると海外では捉えられている。
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欧州の鉄道ビジネスを通して見えたのは、日立の膨大なリソースの潜在力と、国内を横目に進む権限委譲だった。一方、米国を通して見えるものは、従来の日本企業にはない新しいグローバル統治の姿である。製品開発のスピードを限界まで速めるこの仕組みもまた、外国人の評判を高める大きな要因になっている。
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日本企業が世界で存在感を示せない理由の一つに、リスク回避優先の投資戦術がある。市場があることを見極めてから投資を本格化する姿勢では「積極性と成長性のある企業」とは見なされない。対照的なのが日立の中国事業だ。以前から好調だった中国ビジネスだが、川村・中西体制以降は、大胆な投資戦略で、一段と事業を拡大している。
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PART 2
“外圧”で国内も変える
海外で実験的に進めたグローバル化戦略は、国内にもプラスの影響を及ぼしている。聖域だった研究所の改革も始まり、「工場プロフィットセンター制」の残滓も消え始めた。中西改革は、四半世紀続く「改革のループ」から日立を脱却させる可能性を秘めている。
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編集長インタビュー
安心している暇はない
2期連続の営業最高益を更新し、V字回復後も業績の拡大が続く日立製作所。だが、中西会長は現状の成長や改革のスピード感に全く満足していない。日立は10年後、どのようなグローバル企業に変貌を遂げるのか。(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)