2016年6月13日号
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PROLOGUE
たばこ農家が問うJTの行方
「JTがどの方向に進んでいくのか、少しでいいから方針を示してくれませんか」。昨年6月、鹿児島県たばこ耕作組合の本部。農家の声を聞きに来た日本たばこ産業(JT)の小泉光臣社長に、通畠幸一組合長が迫った。縮小するたばこ市場でどう生き残っていくのか、若い農家を中心に不安の声が消えないためだ。しかし、小泉社長は明確な回答を避けたという。「JT自身は何かシナリオを考えているはずなんだが」と、通畠組合長は首をひねる。
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PART1
2つの「異端児」容赦なき攻防
JTにとって金城湯池だった日本市場に米国から脅威が押し寄せる。将来の強敵になりかねない新興ブランドは巨額買収でのみ込んだ。だが続いて、紙巻きでない全く新しいライバルが襲いかかる。
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電子たばこ最前線
喫「蒸気」者、業界揺らす
欧米を中心に、「電子たばこ」と呼ばれる新分野の市場が急拡大している。安全性の研究や規制整備はこれからだが、大手も将来性を見据え相次ぎ参入する。世界的な関心が高まるなか、日本も無関係ではいられない。
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PART2
M&Aでも独力でも、高まる成長ハードル
JTの経営で長らく称賛の対象となってきた海外事業が今、岐路に立たされている。先進国市場では規制強化の逆風が吹き、新興国市場の開拓は道半ばだ。市場の「限界」が近づくなか、持続成長に向けたハードルは高まる。
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PART3
脱・善悪二元論へ会社の未来託す
たばこ市場の成長余地が狭まる中で、JTは将来の事業モデルを模索している。市場縮小と規制強化というグローバリズムの限界は、いつか他の産業も襲う。「我々とは何者か」。経営陣はその哲学的命題を自らに問い続ける必要がある。
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編集長インタビュー
小泉光臣氏[日本たばこ産業社長]
民営化から約30年を経て、たばこの世界トップを目指せるまでになったJT。本業は世界的な規制が広がり、食品など多角化事業の育成も道半ばだ。30年先には「たばこ会社」を超えるような自己変革の道を模索する。