巨大な物体をレントゲンのように透視できる「ミュオグラフィー」の技術開発が進む。X線に相当するのが宇宙から届く「ミュー粒子」。検知精度の向上で内部をより鮮明に把握できるようになった。石油やレアメタルの探査、橋梁やダムの安全点検など、幅広い分野での活用が期待される。

 中米グアテマラ南部のフエゴ火山が6月3日に噴火し、死者が100人を超す大惨事となった。米ハワイ島のキラウエア火山は5月3日から噴火を繰り返しており、溶岩流で破壊された住宅が600戸に達した。「火山大国」の日本にとって、世界で相次ぐ災害はひとごとではない。被害を抑えるために、火山学者が噴火予知の研究を急いでいる。

 「マグマの上昇は、噴火が間近に迫っているサインだ」と語るのは、東京大学地震研究所の田中宏幸教授だ。地中深くのマグマが、火道と呼ばれる筒状の通路を通って地上に噴出する現象が噴火である。田中氏はレントゲン写真のように火山を「透視」することで、火道の内部を探ろうとしている。

 レントゲンのX線に相当するのが、宇宙からシャワーのように降り注ぐ素粒子の一種「ミュー粒子」だ。遠い宇宙の超新星爆発で発生した宇宙線が、地球の大気と衝突するとミュー粒子が生じる。ミュー粒子はサイズが極めて小さく、ほとんどの物質を通り抜ける。目には見えないが、手のひらをかざせば1秒間に1個が通り抜けている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2250文字 / 全文文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「テクノトレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。