2週間続けて1分ごとのデータを収集するセンサーや、「蚊」の口を参考にした注射針。糖尿病の悪化予防に不可欠な血糖値の測定で、「無痛」を売りにする機器が相次ぎ登場した。誰もが手軽に血糖値を測定できれば健康寿命の延伸と、医療費削減も期待できる。

 パチン! 乾いた音が響くと指先に針が刺さり、米粒の半分ほどの血がにじむ。名刺大の測定器で血に触れると、画面に血糖値が表示された──。

 国内に約100万人いる重度の糖尿病患者は毎日、こんな作業を繰り返している。血糖値に合わせて注射するインスリンの量を、自分自身で調整する必要があるからだ。健康な人の血糖値は1日の間に70~130mg(ミリグラム)/dL(デシリットル)の範囲で変動しているが、糖尿病になると食後の血糖値は200mg/dLを超える。血糖値を適切な範囲に保たなければ、心筋梗塞や脳卒中などを生じるリスクが1.8倍から2.5倍高まるという。そのため、食前、食後、寝る前など、1日に何度も血糖値を測定する。

血糖値の測定方法の変化
●痛みを伴う指先からの採血が不要に
血糖値の測定方法の変化<br /><small>●痛みを伴う指先からの採血が不要に</small>
(写真=左:Tetra Images/Getty Images)
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 ところが、従来の血糖測定には大きく3つの課題がある。一般的な血糖測定器の針は直径1mm弱と太く、刺す時に痛みを伴う。指先に傷ができて、雑菌などに感染する恐れもある。さらに、保険適用で血糖値を測定できる回数は1カ月に最大で120回まで。このような背景から、患者が徐々に血糖測定を怠ってしまうケースが少なくなかった。

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