幅広い事業領域を誇るソニーの中で、音楽部門は金融、ゲーム、半導体に続く規模の利益を生み出している。2018年3月期は売上高が7800億円、営業利益で1100億円を見込む。かつてのようにCDといったパッケージソフトを販売しているだけでは、もちろんない。

 CD市場が1990年代から急速にしぼむ中で、ネット時代に対応したストリーミング配信など、新たなビジネスの種をまいてきた。その成果が今、出ているのだ。そんな音楽部門で、これからの収益の柱になり得る事業として期待されているのが、ライブホールの運営事業とキャラクタービジネスだ。いずれも消費者との接点を大切にする平井一夫社長が掲げてきた「ラストワンインチ」を具現化するビジネスである。

 ライブホールの運営事業の歴史は意外に古い。ソニー・ミュージックエンタテインメントのグループ会社として、1997年にホールネットワーク(現・Zeppホールネットワーク)が発足。98年に「Zepp」第1号が札幌にオープンし、現在は札幌、東京、名古屋、大阪の4都市で6つのホールを運営している。

 同社のホールの収容人数は、ライブハウスよりも大きく、コンサートホールよりも小さい2000人規模だ。各ホールで舞台機構や音響・照明設備を統一しているため、全国でライブツアーを行う場合は一つのプランで全ホールのセッティングができるようになり、時間とコストの低減につながっている。まだ知名度の低い新人アーティストにとっても利用しやすく、Zeppはいわばライブハウスでデビューしたアーティストを発掘し、育てる場にもなってきたのだ。

 こうした展開が実を結び、今では「全国各地で公演をしたいというアーティストが増えている」と、Zeppホールネットワークの妹尾智代表取締役は手ごたえを口にする。同社では福岡や横浜、京都、神戸、金沢など地方都市への進出も視野に入れる。

 ライブホール事業には追い風が吹く。CDなどのパッケージソフトや音楽配信サービスで音楽を楽しむだけでなく、実際にライブ会場に足を運ぶ消費者が増えているからだ。2010年代からは新人から著名な音楽グループまで数十のアーティストが一堂に会し、一日中楽しめる音楽フェスティバルが定着。妹尾代表は、「消費者にとってコンサートがより身近になったことも大きい」とみる。

Zeppホールネットワークの妹尾智代表(写真:的野弘路)

 幅広いアーティストがファンと時間を共有する場として定着してきたZepp。その舞台は海外にも広がろうとしている。

 2017年に海外初のZeppブランドを冠した「Zepp@BIGBOX Singapore」をシンガポールでオープンしたことを皮切りに、台湾の新北市やマレーシアのクアラルンプールでもホールの建設を進めている。アジアでもインターネットを介して、日本人アーティストの動向はすぐさまチェックできる環境になっており、そこでリアルなライブイベントの場を提供できれば、日本人アーティストの活動の場は確実に広がる。