父が築いた西武鉄道グループから独立し、西武百貨店を核とする西武流通グループ(セゾングループ)を築き上げた時代の寵児、堤清二。詩人・小説家の辻井喬としての顔も持ち、“セゾン文化”を全国に発信した。だが、バブル経済の崩壊と共にグループは瓦解。無印良品、ロフト、パルコを生み出し、文化の創り手と称された男の功罪を検証した。
シリーズ
堤 清二 先見と誤算

完結
10回
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綱渡りの生涯、光は見えたか
死を覚悟して最後に出した詩集で、綱渡りの生涯だったと振り返った。苦闘しながらも事業に理念を注ぎ込み、新たな価値を社会にもたらした。世界初の無印ホテルが中国に18日開業。堤の思想の普遍性が試される。
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同床異夢の「西武はひとつ」
ホテルなど異母弟・義明の事業領域に攻め入り対立は決定的になった。その義明は証取法違反事件で自壊し西武鉄道グループから追放される。裁判で創業家の権利を訴えた清二は、かつて憎んだ父を許し始めていた。
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セゾン解体、屈辱の戦い
バブル期までの拡大戦略で「共犯」だったはずの銀行は豹変した。容赦なく負債の返済とセゾン解体を迫る銀行に、堤は対峙した。グループ内にも生じた火種を消すため大物政治家に頼る場面もあった。
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撤退戦の開始、石油王が示唆
華やかな拡大戦略は暗転して、業績悪化と相次ぐ不祥事に見舞われる。セゾンの成功も失敗も本質的な要因は、堤という経営者に内在していた。91年の「引退宣言」はバブルの後始末という長い撤退戦の始まりだった。
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吉野家が見た救世主の虚実
多くの企業再建を手掛けた堤は、周囲の反対の中で吉野家も支援した。異例の決断は保守化するセゾンに対するアンチテーゼの意味があった。だが吉野家は総帥への忖度がはびこるセゾンの病に直面することになる。
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大衆は幻影を見ただけか
文化の香りがする豊かな生活が手に入る──。大衆に夢を見させた。バブル崩壊で詩人経営者は糾弾されたが、その精神は今も生きている。セゾン文化は「お坊ちゃん育ち」の屈折した心情とも表裏一体だった。
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百貨店も堤も否定せよ
入社した駅前デパートは父が仕掛けた無謀な米国出店でさらに苦境に陥る。百貨店の常識を覆す創造的破壊と事業拡大で、大逆転を狙った。ロフトのような新事業は生んだが、百貨店はなお隘路にはまったままだ。
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幻の「銀座パルコ」と夢の跡
百貨店が君臨していた東京に「異端」として誕生したパルコ。セゾン文化の拠点として輝いたが、後に買収の標的となり流転する。堤は行く末を案じて、晩年も水面下で動いていた。
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「覇者は瞬時に没落する」
無印良品を生んだ堤との距離のとり方に、歴代の経営者は腐心してきた。関係者の証言から、堤が掲げる理想と現実の摩擦が浮かび上がる。だが、栄枯盛衰を体現した事業家として晩年、社員に深い言葉を残した。
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逆説のブランド MUJIの原点
2013年に他界したセゾングループ創業者、堤清二。11月25日に命日を迎える。200社で売上高4兆円を誇ったグループはバブルの処理で解体された。光と影が交錯する86年の人生は決して成功物語ではない。だが、しぶとく生き残っ…
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全8回