「競争的資金」と考えるべきだ

 住民税として納めるべき税金が寄付金に形を変え、別の地方に行くというのが基本的なふるさと納税の考え方だ。税制の観点で見れば、ある種の「ゆがみ」があることは確かだろう。また、地方交付税などのように、「富の再分配」のためにも必要だとの意見もある。

 ただ、筆者はふるさと納税は、富の再分配ではなく、「競争的資金」と捉えるべきだと考えている。ふるさと納税の実施主体はあくまで個人。獲得するために一生懸命に取り組んだ自治体がより多くの資金を得て、さらに競争力を高めるために活用することができる。

 それでは、多くの資金を獲得するために自治体に必要なものは何か。それは企業的な経営の視点であり、マーケティング力である。

2013~15年度にかけ急増した
●ふるさと納税の納税額と件数の推移

 現在、ふるさと納税に関しては多くの自治体が「返礼品」を活用している。寄付のお礼として、何がしかの品物をプレゼントするというものだ。「ふるさとチョイス」というポータルサイトも人気を集めており、利用者の側にも、返礼品ファースト、寄付金セカンドというイメージが強い人が多いのではないだろうか。

 返礼品が地方の特産品であれば、消費者の目をその地方に向けさせることができ、かつ資金も地方の事業者に入ることになる。多くのフォロワーを獲得することで、自治体の魅力を広く伝えることができる。

自治体は地場の農産物などの返礼品で納税者にアピールしている (写真=アフロ)

 さらに、自治体だけでなく事業者に資金が流入することで、事業育成や地域の経済を支えることにつながっていくメリットもある。

 自治体にとっては獲得した資金をどのように活用するかも重要だ。目立った事例はまだ多くはないが、例えば神戸市ではこの資金をベンチャー企業の支援にあてようとしている。様々な有力ベンチャーが神戸市で育てば、将来的に多くの企業や人を呼び込み、自治体のキャッシュフローを増やすことにつながる可能性がある。

生まれ故郷や応援したい自治体など対象を自由に選べる
●ふるさと納税の仕組み・手続き

 ただ、ふるさと納税にも運用や制度に様々な課題がある。

 まず返礼品について。都道府県、市区町村を合わせて全国には1800弱の自治体があるが、魅力的な特産品を持っている自治体ばかりではない。そうした中で、例えば米アップルの「iPad」などの家電製品や、商品券を返礼品にしているところもある。

 それだけでは、地域の事業者には金が流れない。マクロ経済全体で見た場合に、本来は都市部に落ちている住民税のかなりの割合がふるさと納税を通じてアップルに流れていくという制度は、批判されても仕方がないだろう。

 では、特産品を持たない自治体はどうすればいいのか。筆者は代替案として、例えば県内の他の自治体や隣県の自治体から返礼品を調達する方法が有効ではないかと考える。そうすれば、その自治体を中心にある程度の広域圏に金が流れるようになり、中長期にその地域の経済を支えることにもつながる。

 返礼品の制度にも改善すべき点がある。例えば現状、高額納税者ほど得をする構造になっていることがある。

 ふるさと納税で税金の控除を受けられる金額は住民税の2割までで、利用者は一律で2000円を負担する。寄付金に対する返礼品の金額換算値(還元率)は平均して約4割で、例えば住民税の2割が10万円の場合、4万円分相当の返礼品がもらえる。