少子高齢社会を迎え、女性の活躍が必要不可欠となった日本社会。出産や子育てで一度離職をした女性はブランクが長く、教育支援などで仕事復帰しやすい環境整備が必要だ。

大内章子[おおうち・あきこ]
関西学院大学専門職大学院
経営戦略研究科准教授

総合商社を経て慶応義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員研究員などを経て現職。専門は女性のキャリア形成など。

 少子高齢化により人口が減少しているにもかかわらず、日本では就業者と失業者の数を合計した労働力人口が2012年以降増加している。それまで労働に参加していなかった女性や高齢者が労働に参加するようになったからだ。中でも15~64歳の女性の就業率は1975年に最低の48.8%だったが、2017年は67.4%になった(総務省の労働力調査)。多くの女性は出産・育児により離職し、子育てが一段落する頃に再就職することから、労働力率は、出産・子育て期を谷にした「M字型カーブ」を描く。このM字型カーブの谷は、高度経済成長期に最も深かったが、17年にはかなり浅くなった。それでも、働く意欲があるのに仕事をしていない「潜在的労働力」人口369万人のうち262万人は女性が占め、その3分の1は出産・育児を理由に求職活動をしていない。人口減少が続く限り、さらなる労働力を確保するためには、潜在的労働力の掘り起こしが求められる。

出産や育児を理由に求職活動をしていない 女性の潜在的労働力は多い
●非労働力人口における非求職理由
出産や育児を理由に求職活動をしていない 女性の潜在的労働力は多い<br />●非労働力人口における非求職理由
出所:総務省「労働力調査」(2017年)から作成

 出産・育児によって仕事上のキャリアを一時中断している人は、育児が「一段落」してから再就職を希望している人が多い。「一段落」の時期は、人により幼稚園入園、小学校入学、中学入学までと異なるが、ブランクが長い人ほど就職しにくい傾向にある。過去の調査では、ブランクが長い人ほど「就職したい」と考えてから「再就職が実現する」までの期間が長いという。企業側がブランクが長い人の採用を敬遠するだけではなく、女性側の「ブランクが長くて、社会で通用するのか」という心理的な要素が影響していると考えられる。

職場復帰のハードル高まる

 ここ数年、社会環境が変化するスピードは加速している。10年ほど前はワードが使えれば十分だったIT(情報技術)スキルが、最近ではエクセルやパワーポイントができて当たり前になってきた。中小企業ではグローバル化により、英語能力を求める動きが出始めている。さらに人手不足により、1人で人事や総務、経理など複数の仕事に対応できる人材を求めている。出産や育児のため、数年間にわたりビジネスの現場から離れていた女性にとって、職場復帰するハードルは心理的にも能力的にも上がっている。

「主婦は人材の宝庫」

 ただ一方で、主婦の仕事は育児や家事といった複数の仕事を同時にこなす「マルチタスク」だ。これは生産性向上を狙う企業にとって、育成すれば戦力に変身する人材で、ある中小企業の社長は「主婦は人材の宝庫だ」と表現した。潜在的労働力である主婦の労働参加が進めば、日本経済の活性化にも大きく寄与すると考えられる。

 ではどうすれば潜在的労働力である女性が仕事復帰しやすい環境を整えることができるのか。筆者が考えるのは学び直しの場(リカレント教育)の拡充だ。仕事に必要なITや会計・人事、経営戦略の構築といったスキルや知識は、日本では仕事をしながら得ることが多い。働きながらそうした知識を得る機会に恵まれなかった場合、独学で学ぶことは難しい。リカレント教育では、ビジネススキルだけでなく、最新の社会の状況を知り、再就職への心理的なハードルも下げる効果がある。