新電力の脅威は原発

大手電力会社の比率は8割超
●電気事業者ごとの発電出力の割合
大手電力会社の比率は8割超<br/>●電気事業者ごとの発電出力の割合
注:大手電力会社の数値は、東京電力ホールディングス、関西電力、中部電力、九州電力、東北電力、電源開発、中国電力、北陸電力、北海道電力、四国電力、沖縄電力の合計。メガは100万
出所:資源エネルギー庁

 新電力が豊富に商品(=電力)を確保できるようにするにはどうすべきか。 一つは、電源開発(Jパワー)の電力を調達できるようにする方法だ。Jパワーは各地域の大手電力向けに電力を卸すよう義務付けられてきた。この規制が撤廃され、現在は誰にでも販売できるようになっている。

 だが、新電力向けが急増したかというと、残念ながらそういう事態にはなっていない。Jパワーは大手電力会社と電力供給に関して長期契約を結んでおり、容易に新電力向けに振り向けることはできない。国は各大手電力会社に対し、Jパワーから得た電力を市場に切り出すように求めたが、ほとんどは無視され、切り出しがあってもわずかな量にとどまった。

 そこで政府は、「ベースロード電源市場」の創設により、競争を促そうとしている。ベースロード電源とは、石炭火力や水力、そして原子力など、安価かつ安定的に大量の電力を供給できる電源を指す。発電所建設に多大な設備投資が必要で、その多くは大手電力会社が抱える。新電力は原子力や水力発電などに比べ建設コストが低いガス火力発電所を持つのが一般的だ。ただガス火力は「ミドルロード電源」と呼ばれ、ベースロード電源に比べて可変費が高く、その代わりは務まらない。

 新電力にとって特に脅威なのが原発だ。相次ぎこれが稼働し始めると、新電力は太刀打ちできない。原発は建設コストは莫大だが、逐次燃料を買い入れる必要がないので、一度建ててしまえばランニングコストは非常に低い。 原発が動かないことを前提に新電力が自社で発電所をつくるのは、リスクが大きすぎて難しい。今は稼働していなくても、新電力は常にそのリスクを意識し続けなければならない。発電所の建設には何年もかかる。その途中で原発が稼働したら目も当てられない状況に追い詰められてしまう。

 ならば原発を含めた大手電力会社のベースロード電源に、新電力がアクセスできるようにすればいい。ベースロード電源で作った電力を新電力が市場で買えるようにするわけだ。

 もっとも、市場の検討は始まったばかり。どのような市場なら活発に取引が行われるか。大手電力と新電力との契約期間は1年がいいのか、10年がいいのか、詰める必要のある点は多い。

 ベースロード電源市場創設と並行して議論されているのが日本卸電力取引所(JEPX)を活性化する取り組みだ。 JEPXは一定の条件を満たす会員企業が市場で電力を売買する機会を提供している。ただ、ここでやり取りされる電力の量は日本全体の電力需要の2~3%程度にすぎない。大手電力会社が余剰分しか市場に放出しないからだ。 そこで電力・ガス取引監視等委員会が検討するのが「グロス・ビディング」という仕組み。電力の一定量をJEPXに放出するよう大手電力会社に約束させ、自社で必要な分は市場から買い戻してもらう。これで新電力が即座に豊富な電力を調達できるわけではないが、定着すれば市場の流動性が増す可能性はある。

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