期待と定量面とのギャップ

最大でGDPを1.9%程度押し下げる効果
●自動車の国内生産台数見通し
最大でGDPを1.9%程度押し下げる効果<br/>●自動車の国内生産台数見通し
出所:みずほ銀行産業調査部
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 現在、日本の航空機産業の出荷額は自動車産業の30分の1であり、日本のGDP(国内総生産)の0.4%を占めるにすぎない。民間航空機の生産が倍増し、かつMRJの効果を加えても、GDP押し上げ効果は約0.4%に満たない

*=民間航空機の生産倍増分0.2~0.3%、MRJ0.1%。MRJは、カタログ価格(定価)43億円×年間120機=5160億円から、一定のディスカウントを想定
航空機は自動車の減少を補うには力不足
●日本の産業別出荷額比較(2014年)
航空機は自動車の減少を補うには力不足<br/>●日本の産業別出荷額比較(2014年)
出所:工業統計

 一方で自動車産業の国内生産は、みずほ銀行産業調査部の試算では、中長期的にはピーク時の1150万台(2008年)との比較において最大で450万台減り、GDPを1.9%程度押し下げる可能性がある。すなわち、航空機産業の成長だけでは、自動車の減少を補うには力不足だ。

 では、日本の航空機産業が、現在の延長線上にとどまらない成長を実現するにはどうすればよいだろうか。

 その鍵を握るのは、米ボーイングが2016年内にも開発開始を検討しているとされる、新たな航空機ではないだろうか。

 世界の航空機市場は、ボーイングと欧州エアバスの2社による寡占市場である。日本の航空機産業は、これまでボーイングの航空機生産のパートナー、すなわち優良な下請けとして実績を積み上げてきた。

 この実績と信頼関係を生かしつつも、ボーイングの新たな航空機の開発に当たって、これまでと抜本的に異なる取り組みをすることが、日本の航空機産業の飛躍的な成長につながり得るだろう。

<b>米国のボーイングの工場。誘致により大きな経済効果が期待できる</b>(写真=ロイター/アフロ)
米国のボーイングの工場。誘致により大きな経済効果が期待できる(写真=ロイター/アフロ)

 その取り組みとは、開発費の分担と完成機工場の誘致である。

 まず開発費では、1兆円を超える規模と言われる巨額の費用を、日本が数千億円規模で負担する。

 狙いは、下請けとしてのパートナーから、費用負担と収益分配を共にする意味でのパートナーに立場を変えることだ。「リスク・アンド・レベニュー・シェアリングパートナー(RRSP)」と呼ばれる形態や、JV(合弁会社)だ。それにより、費用負担に応じた開発・生産分担による大幅な生産量の拡大が見込める。

20年間で100兆円の経済効果
●20年間で100兆円の経済効果
20年間で100兆円の経済効果<br/>●20年間で100兆円の経済効果
*=20年間の航空機製造、空港整備、工場建設、研究開発投資から生じる効果の合計 出所:みずほ銀行産業調査部

 生産量の拡大は、航空機に応用できる技術の宝庫と言われる日本企業が、航空機産業への参入を本格的に検討する契機ともなるだろう。開発の早い段階から日本の他産業も含めて素材・部品の認証取得を促し、これまでと異なる規模の共同開発を実現するのだ。

 こうして開発した航空機を、自動車の減少を補い得る規模の輸出産業とするには、もう一工夫必要だ。それが完成機工場の誘致である。

 みずほ銀行産業調査部の試算では、新型機の共同開発を通じて日本の素材・部品を活用したうえで、月間10機から15機程度を生産する拠点を誘致した場合の経済効果は、少なくとも20年間で約100兆円に達する。

 これは日本のGDPを年間1.1%程度押し上げる効果に相当する。先に述べた現在の延長線上の0.4%弱の成長と合わせれば、GDPの押し上げ効果は1.5%程度と、自動車の減少分をある程度補い得る水準となる。

 言い換えれば、航空機産業を自動車に続く基幹産業として育成するには、この規模の育成策が必要と考えられる。

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