安倍政権において保育施設の拡充は進んでいるが、「子どもの視点」に立った子育て支援策が欠かせない。すべての子どもが「保育を受ける権利」を保障する国も増えている。日本はこの面でも出遅れている。

日本総合研究所調査部主任研究員
1989年日本女子大学卒業。三井銀行入行、三井銀総合研究所出向。2000年千葉大学大学院博士課程修了。01年より現職。近著に『親が参画する保育をつくる』(勁草書房)。
国は「成長戦略の中核」として女性の活躍を推進しており、その一環として保育施設の整備が進められている。2017年4月の待機児童数は約2万6000人と、いまだゼロにはほど遠い。だが、保育所等の定員は274万人と、この5年で50万人も増えた。
保育施設の整備が、女性の就労を促していることは評価できる。1、2歳児の保育所等利用率は46%と、5年間で13ポイントも上昇した。一方で、子育て支援において「子どもの視点」が忘れられがちだ。安倍政権は、人口減少を経済成長にとっての大きな制約と考え、経済成長の担い手を増やす戦略に主眼を置く向きがある。子育て支援の議論においても、女性や子どもという将来の経済の担い手をどう確保し、どう増加させるかという経済的必要性の意味合いを色濃く感じる。
子どもが行きたい保育園か
しかし、子どもや女性は経済成長の「担い手」として存在しているだけではない。国際的な動きとして、1979年には女子差別撤廃条約が、89年には児童の権利条約が国連で採択され、日本もそれぞれ85年、94年に批准している。女性の活躍推進は、女子差別撤廃の方向性におおむね沿っているが、今進められている子育て支援施策には、児童の権利条約に照らして必ずしも「良策」といえないことがある。
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