改正著作権法が成立し、小説や漫画の著作権保護期間は作者の死後50年から70年へ延長される見通しだ。 著作物の風化を加速させる可能性も否定できず、対応策の検討も急務だ。

明治大学
情報コミュニケーション学部准教授
米国を除くTPP(環太平洋経済連携協定)参加11カ国の新協定「TPP11」は国内で関連法が成立するなど批准・発効に向けた動きが進んでいる。注目したいのは関連法の中に「作者の死後50年」だった小説や絵画、漫画などの著作権の保護期間を「死後70年」に延長する改正著作権法が盛り込まれたことだ。これまで映画に関しては公表後70年に延長された経緯はあるが、その他の著作物については議論はあったものの、作者の死後もしくは公表後50年に据え置かれてきた。発効時期は判然としないが、この変更は出版業界を中心に大きなインパクトがある。
今回の著作権法改正は、TPP交渉を離脱した米国に配慮した背景がうかがえる。保護期間が「死後70年」の米国は、同国内では日本の小説や絵画が70年保護されるものの、日本では米作品が50年しか保護されていないなど各国間のばらつきに不満を抱いており、離脱前のTPP交渉の場でも保護期間の統一を訴えていた。米国離脱後のTPP11を主導する立場にある日本としては、米国を再び交渉のテーブルにつかせるために保護期間の延長を盛り込んだ形だ。
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