日本が温暖化ガスの排出削減目標を達成するには、30年までに約75兆円の省エネ投資が必要だ。エネルギー効率の向上は産業競争力に直結する。巨大な投資需要を景気浮揚の起爆剤にする視点も重要だ。

三井住友銀行
国際環境室室長代理
近年、気候変動に起因するとみられる自然災害が世界各地で頻発している。日本でも7月に発生した西日本豪雨が甚大な被害をもたらした。こうした極端な気象現象は、気候変動が進むことで増加することが指摘されている。実際、世界の大規模な自然災害の発生件数をみると、近年は1980~90年代の平均の2倍の水準であり、そのうち洪水や台風、ハリケーンといった、気候変動と関連する可能性の高い災害が8割以上を占めている。将来、温暖化がさらに加速するとみられ、気候変動対策は日本においても待ったなしの社会的な課題となっている。
2015年にパリで開催された第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択され、各国は温暖化の主因であるCO2(二酸化炭素)の排出量について、自主削減目標を設定した。日本は30年までに、13年比26%の削減を掲げているが、これに従えば、30年のCO2排出量を1980年代前半と同水準まで減らす必要がある。日本は世界トップレベルの省エネ先進国だが、この目標を達成するには、産業界はさらに大幅にエネルギー効率を引き上げなければならない。省エネ関連規制の強化や炭素税の導入などが始まれば、各企業は、これまで以上に大胆な省エネ投資を迫られる可能性もある。

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