
追手門学院大学 経営学部准教授
1968年生まれ。京都大学経済学部卒。同大学院情報学研究科指導認定退学。博士(情報学)。社会情報学とダークツーリズムの手法で、災害や戦争の記憶の承継に取り組む。

ダークツーリズムとは、戦争や災害の跡をはじめとする悲しみの記憶をめぐる旅であり、20世紀末に英国の学者によって提唱された。2000年に出版された初の体系書では、典型的な事例としてポーランドのアウシュビッツ強制収容所や広島の原爆ドームなどが紹介されていたが、現在では、刑務所や人身売買の関連史跡など、そのカバーする領域は急速に広がりつつある。
この概念が発表された当時、こうした旅の形態は一部のマニアのものだと考えられていた。ところが、ここ10年程度の状況を鑑みると、どうもそうとは言えないことが分かってきた。実際、アウシュビッツの入場者数は、2001年と2015年を比べると約3.5倍に膨れ上がっている。
また広島の原爆ドームを含む周辺地域は、世界最大の旅行サイトであるトリップアドバイザーの「外国人に人気の日本の観光スポットランキング2015」において、2位となっている。とすれば、ダークツーリズムの経済的側面についてももはや無視することはできず、独自の分析の視点が必要となってきている。
筆者としては、ダークツーリズムを経済の観点から分析する場合、2つの面からの考察がなされなければならないと考えている。一つは、そもそもダークツーリズムポイントで利益を上げて良いのかという倫理的な論点であり、もう一つはそれを前提として、どのように地域振興の中にダークツーリズムを組み込むべきかという政策的な論点である。
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