
慶応義塾大学 経済学部教授
1975年生まれ。米ロチェスター大学Ph.D.(経済学)。 2014年より現職。著書に『多数決を疑う』(岩波新書)など。近著に『「決め方」の経済学』(ダイヤモンド社)。
7月の参院選では自民・公明の与党が改選過半数を獲得し、おおさか維新の会などを含めると「改憲勢力」が3分の2に達した。
だが、現行の多数決選挙はさまざまな難点を抱えている。ここでは票の割れ、制度の混合、そして社会的分断に焦点を当て考えてみよう。
まず、多数決は「票の割れ」に弱い。有名な例は、2000年の米大統領選挙だ。民主党のアル・ゴア氏が共和党のジョージ・W・ブッシュ氏に対して優勢に立っていたところ、「第三の候補」としてラルフ・ネーダー氏が参戦。ネーダー氏はゴア氏の票を致命的に食い、ブッシュ氏が逆転勝利をおさめた。
これと同じような票の割れが、今回の参院選の1人区でも起こっている。自・公と民進・共産が対決する構図のなか、自民党に主義主張が近い幸福実現党が候補を立て、絶妙に自民党の票を奪ったのだ。
表にあるように、青森、新潟、三重、大分の4県では、もし幸福実現党が候補を立てなかったら、民進党ではなく自民党の候補が勝利していたと推測される。
自公の共闘も、民共の共闘も、票の割れを避けるための工夫だ。だが、潜在する「第三の候補」は二大勢力をおびやかす。多数決に対して最も多い批判は、「少数意見も尊重せよ」だろう。だが、選挙で票の割れが起こるとき、多数決は多数意見さえ尊重しない。
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