美和 卓(みわ・たかし)
野村証券 チーフ・エコノミスト
1990年東京大学教養学部卒、野村総合研究所入社。2013年野村証券投資情報部マクロ戦略課長。国・地域をまたいだマクロ経済、金融市場分析を主に担当。

経団連の榊原定征会長(右)と握手を交わす安倍晋三首相(写真=ロイター/アフロ)

 安倍政権が新しい成長戦略として掲げる「ニッポン一億総活躍プラン」。労働分配が拡大して賃金が上昇すれば、消費が増えて企業の業績が伸び、経済が成長する。企業側は賃上げという形でコストアップしても、それを上回るほどの収益増が期待できる──。

 こうした雇用、所得、消費の好循環こそがアベノミクス「第3の矢」の肝だったが、残念ながら現時点でうまくいっているとは言い難い。

 今年、春闘の賃上げ率は昨年より低下した。パートタイマーや非正規雇用者については人手不足から時間当たりの賃金上昇が起きつつあるが、今後も続く可能性は低い。下のグラフからも分かるように、全体として労働への分配を大きく拡大しようという機運は起きていない。

労働への分配は大きく拡大していない
●国民所得統計ベースの労働分配率
出所:内閣府のデータを基に野村証券作成