マイナス金利政策の長期化と、「フィンテック」を標榜する新興企業の台頭にあえぐ銀行業界。だが顧客の姿を深く知り、その情報を活用できれば、復権の可能性はまだ十分に残っている。

野崎 浩成[のざき・ひろなり]
東洋大学
国際学部教授

米エール大学大学院修了。シティグループ証券、京都文教大学などを経て2018年4月から現職。近著に『成長神話という煩悩からいかにして金融は解脱すべきか』。

 銀行業界の苦境が叫ばれて久しい。最大の要因は長引くマイナス金利政策により、預け入れと貸し出しの金利差(利ざや)で稼ぐという伝統的なビジネスモデルが揺らいでいることだ。

 全国銀行協会によると、全国の銀行の預貸の利回りの差は2016年度に平均0.23ポイント。過去10年は一貫して前年以下となっており、金融危機にあえいだ1998年度や2008年度をも大きく割り込む水準が続いている。今後もしばらく金利の上昇は見込みにくい。

本業による稼ぐ力は弱まっている
●全国の銀行の業績推移
<span class="title-b">本業による稼ぐ力は弱まっている</span><br/><small>●全国の銀行の業績推移</small>
注:08年度はリーマンショックによる証券化商品関係の損失が急減要因に
出所:全国銀行協会の統計を基に筆者作成
(写真=ロイター/アフロ)
(写真=ロイター/アフロ)

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