米国第一主義を掲げるトランプ大統領の登場以前から、同国の経済的孤立は進んでいた。ドルの存在感も失われつつあり、世界経済の中心はサービス業の急成長が見込めるアジアへと移っていく。

青木 大樹[あおき・だいじゅ]
UBS証券
ウェルス・マネジメント
日本地域最高投資責任者

2010年まで内閣府で経済調査などに携わり、「骨太の方針」策定を担当。05年米ブラウン大学大学院経済学修士号取得。10年UBS証券入社、16年から現職。

 トランプ米大統領が3月に鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を発動し、中国も対米報復関税に動くなど、貿易を巡って緊張感が高まっている。このほか同大統領は、NAFTA(北米自由貿易協定)の離脱に言及するなど、保護主義的な姿勢を鮮明にしている。

<span class="fontBold">米国第一主義を掲げるトランプ大統領だが、貿易の重要性は低下している</span>(写真=AP/アフロ)
米国第一主義を掲げるトランプ大統領だが、貿易の重要性は低下している(写真=AP/アフロ)

 ただ、1980年代の日米貿易摩擦のような強い緊張関係には発展しないと筆者はみている。製造業に代わりサービス業の比重が世界的に重くなり、国際貿易そのものの影響度が低下しているからだ。米国経済はトランプ大統領の誕生以前から、着実に経済的な孤立化に向かっている。具体的には、米国経済における貿易依存度の低下とドルの需要低下という2つの観点から孤立化の進行は説明できる。

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