西田貴明(にしだ・たかあき)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 副主任研究員
2009年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。徳島大学客員准教授。グリーンインフラに早くから着目し、研究を続ける。

<b>公園と街を一体で整備したシンガポールのビシャンパーク</b>(写真=下:Ramboll Studio Dreiseitl(提供:福岡 孝則))
公園と街を一体で整備したシンガポールのビシャンパーク(写真=下:Ramboll Studio Dreiseitl(提供:福岡 孝則))

 「グリーンインフラ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。字面からは、従来のインフラに単純に緑地などを追加したものという印象を持つかもしれないが、それは違う。

 数年前から欧米でこの言葉が使われ始め、日本でも2015年8月に閣議決定した国土形成計画で、グリーンインフラの文言が政府計画で初めて盛り込まれるなど、注目が集まっている。

 新しい概念のため明確な定義は定まっていないが、筆者は「自然が持つ多様な機能を賢く利用することで、持続可能な社会と経済の発展に寄与する土地利用計画」だと捉えている。

 生物が社会に提供する恵み(生態系サービス)には、防災・減災や水質浄化など多様な機能が含まれる。また、環境変化に対する安定性(レジリエンス)もグリーンインフラの特徴だ。生態系は自律的に回復する性質を備えているからだ。こうした機能をうまく活用する土地利用や社会資本整備が今、求められている。

緑地を単に設ける概念ではない
●従来の取組とグリーンインフラの違い
緑地を単に設ける概念ではない<br />●従来の取組とグリーンインフラの違い
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