外交
尾島 島雄
おじま・しまお
本誌副編集長。日本経済新聞社でソウル支局、企業報道部を経て現職。

 2018年、日韓関係は過去と比べても最悪の水準に達した。元徴用工訴訟だけが原因ではない。歴史問題を抱える繊細な2国間関係を安定させてきた人的・政治的システムも崩壊している。

 元徴用工訴訟で韓国大法院(最高裁)が下した判決の衝撃が大きいために忘れがちだが、日韓関係が悪化に傾いた源流は2011年暮れに京都で開いた首脳会談だ。従軍慰安婦問題で国家の責任を含め踏み込んだ対応を迫る当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領に、野田佳彦首相が「人道的見地から知恵を絞る」と事実上のゼロ回答をした。

 これが外交の落としどころを探る韓国側には辛辣な対応と映った。李氏はそれまで歴史問題で日本に配慮してきたとの思いが強く、残り任期も迫っていた。実兄や側近は、この前後に次々と逮捕されている。左右両派を納得させる成果を出さなければ失うのは政治力だけではない。退任後の大統領の刑事訴追が慣例のような韓国で、自らの身柄を案じる気持ちも働いたはずだ。

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