企業
秋場 大輔
あきば・だいすけ
本誌副編集長。日本経済新聞社企業報道部、本誌編集委員などを経て現職。

 リオデジャネイロ五輪も終わり、4年後の東京五輪が視野に入ってきた。今後、建設ラッシュが起きるのだろうが、「なるべくお金をかけずに」というスローガンだけでいいのだろうか。

 リオデジャネイロ五輪が終わり、「さあ次はいよいよ東京だ」という空気が漂い始めた。

 1964年の東京五輪を目指して、東海道新幹線や首都高速道路が整備され、羽田空港ターミナルビルの増築や滑走路の拡幅が進められたことはよく知られている。高度成長期だった当時とは経済環境も異なるから、4年後に向けて、あれもこれもとはならないにせよ、それなりに建設ラッシュが続くのだろう。問題は何を造るかもあろうが、どういう思いを込めるかが大事だ。

 そう考えたきっかけの一つは、東京・上野の国立西洋美術館を含む17のル・コルビュジエの建築作品が世界文化遺産に登録されたことにある。今でこそ「近代建築の始祖」と呼ばれるコルビュジエだが、当初、世間は嫌った。伝統的な建築とはまったくスタイルが異なったためだ。

 しかし仏マルセイユに立つ低所得者用集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」は、スーパーや理髪店などを併設。個人の別荘だった「サヴォア邸」は当時、結核の有効な予防法とされた日光浴ができるよう屋根を取り払い、屋上庭園を造った。人のことを考えた徹底的な合理主義。そうした理解が深まり、作品は世界文化遺産になった。

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