産業
金田 信一郎
かねだ・しんいちろう
本誌編集委員。ニューヨーク特派員、日本経済新聞編集委員などを経て現職。

大手のマンション販売が活況な中、本質的なリスクが顕在化しつつある。本当にマンションは住み続けることができるのか──。その問いを追うと、思いがけない答えに突き当たる。

 大手不動産会社がマンション事業を成長の柱にすえている。今年度の4~6月期、三井不動産は中高層マンション分譲の収益が6割増(前年同期比)となった。三菱地所は秋からの大型マンション案件によって、通期では最高益を達成する見込み。他社もマンションを成長エンジンと位置づける。

 だが、ここで疑問が湧く。なぜ、低成長で人口減少が続く日本で、大型マンションがこれほど売れているのか。

 「需要を支えているのはシニア層と投資家」。不動産関係者はそう語る。中国など外国からのマネー流入が続く。

 だが、構造的な問題を抱えるのは、もう一つの柱、シニア層の動きだ。60代以上の購入比率が、わずか6年で5.7%から13.6%(2016年度)に急増した。

 立川駅直結のタワーマンションが、坪単価340万円超と周辺より3~4割高い価格で即完売したのは14年のこと。購入層の多くがシニア層だったことは業界に衝撃を与えた。老朽化した住宅から抜け出して、利便性や設備を求めて新築に移る動きが加速している。

 だが、シニア層が住んでいた場所はどうなるのか。一戸建てならば、老朽化していても、更地にして売買がしやすい。だが、築30年を超える高経年マンションは、事はそう簡単にいかない。

 「子供に相続しても、古くて交通の便が悪い場所には戻ってこない。売るにも、建て替えや大規模修繕が必要となる」。全国マンション管理組合連合会(全管連)の川上湛永会長は、そこに法律の壁が立ちはだかるという。全戸の4分の3以上の同意がなければ、重要事案は進まない。取り壊しに1戸当たり500万〜1000万円かかることもあり、建て替えが実現したマンションは全国で200件程度しかないという。

ゴーストタウン化と新築リスク

 結果、歯抜けのマンションになる。業界では、空き家比率が1割を超えると危険ゾーンに入るといわれる。決議のハードルが高まり、修繕などの案件が進まず、荒廃スパイラルが加速する。「ゴーストタウン」と化す流れを止めるには、住民がコミュニティー機能を取り戻すしか手はない。

 「マンションは鍵1つで気楽だと思われていたが、それは幻想だった。実は1人では何もできない」(川上会長)