企業経営
鈴木 哲也
すずき・てつや
本誌副編集長。日本経済新聞社でニューヨーク支局、企業報道部などを経て現職。

 日米とも消費がGDP(国内総生産)の6~7割を占め、小売業の役割は大きい。だが政治への発言力に大きな差がある。トランプ政権と対峙する米国に対し、日本の業界は青息吐息だ。

 「国境税が導入されると、小売り関連業が支えている4200万人の雇用が危険にさらされ、苦しい生活を送る米国の家族に不当な重荷がのしかかる」

 200以上の小売り関連企業でつくる小売業リーダーズ協会(RILA)は5月下旬にこんな声明を出した。世界最大の小売業、ウォルマート・ストアーズ、衣料品のギャップ、スポーツ用品のナイキなど米著名企業が名を連ねる。

 トランプ大統領が選挙期間中から提唱してきた施策で、輸入に多額の税を課し、国内製造業の雇用を増やそうというものだ。ゼネラル・エレクトリック(GE)など輸出で稼ぐ製造業は賛成しているが、製品を値上げせざるを得なくなる小売業が猛反発した。

 強い反発を受けて国境税の構想は後退した。だが下院で議論は続いており、協会は冒頭の声明で釘をさした。

 協会の中核企業、ウォルマートのダグ・マクミロンCEO(最高経営責任者)は、大統領に助言する「戦略・政策フォーラム」のメンバーでもあり、個別に大統領とも面会している。

 一朝一夕に発言力を獲得したのではない。同社は創業以来、コストがかかるロビー活動を忌避してきたが、2000年代以降、低賃金労働などが批判を浴びたことで方針を転換。ロビイストや政治献金を増やして発言力を高めてきた。国境税を巡る論争では伝統的な製造業に劣らない影響力を示した。

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