80歳を超えてまで、巨大グループに君臨し続けた鈴木敏文。カリスマゆえに、後継者育成が後手に回るジレンマを抱え続けた。それでも、「ミスターコンビニ」としての功績が揺らぐことはない。=敬称略

鈴木敏文(すずき・としふみ)
1932年12月、長野県生まれ。中央大学経済学部を卒業後、東京出版販売(現トーハン)入社。63年にイトーヨーカ堂へ転職。73年にヨークセブン(現セブン‐イレブン・ジャパン)を設立し、コンビニエンスストアを日本に広めた。コンビニに銀行ATMを置くなど、常識にとらわれない改革を実施。2016年5月にセブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO(最高経営責任者)から名誉顧問に退いた。人生観は「変化対応」。(写真=的野 弘路)

 今年12月1日に84歳の誕生日を迎える鈴木敏文は、昨年11月下旬と12月上旬、体調不良により入院した。当時、その病院には名誉会長の伊藤雅俊(92歳)も足を骨折して入院しており、一時はセブン&アイ・ホールディングスを作り上げた2人が同時に入院するという、異例の事態が起きていた。

 だが、周囲の心配は杞憂だった。鈴木も伊藤も無事退院し、「むしろ2人とも、入院前より元気になって戻ってきた」(元幹部)。特に鈴木は入院中も、病院1階にあるセブンイレブンを訪れ、「機会ロスがひどい」と激怒したというエピソードがまことしやかに伝わったほど、経営にかける情熱は衰えることはなかった。

 鈴木は退院後、伊藤とこんな会話を何度もしたと周囲に語っている。

 「伊藤さんは『俺も90歳を超えているんだから、君も絶対90歳までは頑張ってくれよ』と言うんだよ。『いや、とても無理ですよ』なんて僕も言ってね。笑いながら話したんだ」