相次ぐ買収、商品力を重視

セブン&アイ・ホールディングスの主なM&A

 ある幹部は、「鈴木さんも伊藤(雅俊、創業者で名誉会長)さんも、小売業の経営者として百貨店に憧れがあり、何としても欲しかったのではないか」と見る。ダイエー創業者、中内㓛がそうだったように。鈴木は、「そういう思いとは必ずしも一致しないけれど、ようするに商品の上質化、商品開発力の強化を期待したんです」と話す。実際、そごう・西武で開発した商品を使って、グループ内で相乗効果を出そうと、試行錯誤を続けてきた。

 その一つが、そごう・西武が2009年に立ち上げた衣料品のPB(プライベートブランド)「リミテッドエディション」だ。百貨店としては手頃な価格に設定し、幅広い顧客の取り込みを狙った。相乗効果を狙い、イトーヨーカ堂とも共同開発などで連携し始めている。

 だが、イトーヨーカ堂が昨年の秋冬向けに発注した同ブランドのワイシャツは、発注数量に対して売れたのは3分の1にも満たなかった。

 商品開発力を強化する鈴木のこだわりは、衣料品にとどまらない。インターネットを使って複数業態の相乗効果を追求する「オムニチャネル」という考えを取り入れてからは、ネット上でグループ傘下の企業が開発した多様な独自商品を販売する構想を打ち出した。そのビジョンを実現するため、さらなる買収が進められた。

 2013年には、カタログ通販のニッセンホールディングスや、生活雑貨店「フランフラン」を持つバルスと業務・資本提携。昨年には、セレクトショップのバーニーズジャパンを完全子会社化した。

 そして、相次ぐ買収と並行して、オムニチャネル戦略の推進役として重要ポストを駆け上がっていったのが、鈴木の次男、康弘だった。

 システムエンジニアの康弘は、富士通、ソフトバンクを経て、ソフトバンクがヤフー、トーハン、そしてセブン-イレブン・ジャパンと共に設立したネット通販会社の社長に2000年に就任。同社が2006年にセブン&アイ傘下に入ると、グループのIT(情報技術)とネット事業で大きな役割を果たすようになる。2014年には、康弘が社長を務めるネット事業会社が完全子会社化され、康弘は2015年にはセブン&アイの取締役に昇格した。