そごう・西武の巨額買収は、その後のコングロマリット化の第一歩だった。鈴木敏文は退任までの10年、相次ぐ買収で、新たな流通業を模索した。だが、相乗効果を生むのに苦戦。膨らんだ帝国はきしみ始めた。=敬称略

鈴木敏文(すずき・としふみ)
1932年12月、長野県生まれ。中央大学経済学部を卒業後、東京出版販売(現トーハン)入社。63年にイトーヨーカ堂へ転職。73年にヨークセブン(現セブン‐イレブン・ジャパン)を設立し、コンビニエンスストアを日本に広めた。コンビニに銀行ATMを置くなど、常識にとらわれない改革を実施。2016年5月にセブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO(最高経営責任者)から名誉顧問に退いた。人生観は「変化対応」。(写真=的野 弘路)

 「これは僕の不勉強なんだけど、百貨店はもうちょっと商品について明るいと思っていたんだよ」

 鈴木敏文は、2006年にセブン&アイ・ホールディングスが買収した百貨店、そごう・西武(当時、ミレニアムリテイリング)について、誤算もあったことを打ち明ける。

 今年8月2日、セブン&アイは西武八尾店、西武筑波店の2店を2017年2月末までに閉鎖、希望退職も実施すると発表した。そごう・西武がイトーヨーカ堂などに出店していたセレクトショップも同年1月から、10店閉鎖する。今春には、そごう柏店と西武旭川店を今月末までに閉鎖すると公表していたが、セブン&アイ社長の井阪隆一ら現経営陣はリストラにさらに踏み込んだ。

 背景にあるのは、百貨店業界全体の地盤沈下だ。高級なイメージで消費者をつかめた時代は終わり、大手アパレルなどへの「場所貸し」に依存してきた弊害が顕著になっている。百貨店社内には、商品開発のノウハウや人材は乏しいのだ。一方、ユニクロのようなSPA(製造小売り)が力を増し、百貨店離れが止まらない。こうした百貨店の病巣は、買収時点で鈴木が考えていたよりも、根深かったのだろう。

 そごう・西武の買収は、グループが持ち株会社体制に移行した翌年。本格的なコングロマリット(複合企業)化に向けた最初の大型買収だ。最終的な買収金額は約2400億円と見られ、社内外で試算されていた価格を大幅に上回ったが、「別にきゅうきゅうとして買収したわけじゃないから、金額は特に問題ではなかった」と鈴木は振り返る。