
認知症の症状の進行とともに、母は家事ができなくなり、私が引き継ぐようになった。最初は掃除だ。母は、自室だけは「自分でやるから放っておいてちょうだい」と主張していた。
だが掃除している様子はない。「これはホコリだらけの部屋に寝起きしているな」と判断し、嫌がるのを無視して掃除したところ、嫌になるぐらいの大量のほこりが掃除機の中にたまった。これはいけない。こんな環境で寝起きしていては体調を崩してしまう。
自業自得と切り捨てて……はダメだ。母が体調を崩せば、その看護の負荷は自分に回ってくる。家全体の掃除が私の日常の仕事となった。そしてゴミ出し、三度の食事も。母は味付けをしくじるだけでなく、ガスコンロのすぐ横に乾いた布巾を無造作に置いたりするのだ。まず台所を大掃除して、調理用具や食器の配置を変えた。母は面白くなかったらしく、色々文句を言われた。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1140文字 / 全文文字
-
有料会員(月額プラン)は初月無料!
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員になると…
特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題
ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題
日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題
Powered by リゾーム?