(イラスト=モリナガ・ヨウ)

 認知症の症状の進行とともに、母は家事ができなくなり、私が引き継ぐようになった。最初は掃除だ。母は、自室だけは「自分でやるから放っておいてちょうだい」と主張していた。

 だが掃除している様子はない。「これはホコリだらけの部屋に寝起きしているな」と判断し、嫌がるのを無視して掃除したところ、嫌になるぐらいの大量のほこりが掃除機の中にたまった。これはいけない。こんな環境で寝起きしていては体調を崩してしまう。

 自業自得と切り捨てて……はダメだ。母が体調を崩せば、その看護の負荷は自分に回ってくる。家全体の掃除が私の日常の仕事となった。そしてゴミ出し、三度の食事も。母は味付けをしくじるだけでなく、ガスコンロのすぐ横に乾いた布巾を無造作に置いたりするのだ。まず台所を大掃除して、調理用具や食器の配置を変えた。母は面白くなかったらしく、色々文句を言われた。