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イノベーションにこだわり続けるセイコーエプソンの碓井稔社長。技術の先進性は重要だが、それ以上に社会ニーズへの適合が大切だと説く。世の中に「なくてはならない」存在になるために必要な経営とは。

碓井 稔[うすい・みのる]

(写真=的野 弘路)
1955年4月、長野県塩尻市で生まれる。同県松本深志高等学校を経て75年、東京大学工学部に進学。船舶工学を専攻し、79年大手自動車関連メーカーに就職。1年目のお盆休みの帰省時、信州精器(現セイコーエプソン)の募集を見て面接を受け、79年11月同社に転職。ビデオプリンターの開発に携わる。88年、インクジェットヘッドの開発メンバーに。90年、製品化に向けたプロジェクトリーダーを務める。2005年取締役生産技術開発本部長、07年研究開発本部長。08年から現職。
イノベーションで重要なのは「技術」ですか。それとも「社会のニーズ」ですか。

 前回、セイコーエプソンは、「省・小・精」、つまり、物を省く、小さく作る、精度高く作る、といったことに価値を置くDNAを、会社として持っているとお話ししました。エプソンの技術者の根っこにはずっと「省・小・精」を追究しようという思いがあります。だからこそ、それをうまく使って展開できる領域を4つ定めて、イノベーションを起こすことを目指しています。それが、「インクジェット」「ウエアラブル」「ビジュアル」「ロボティクス」の4つの領域です。

 自分たちのリソースをうまく使うことができれば、その領域でイノベーションを起こせる確率が高いと考えています。しかし、そこに固執し過ぎてはいけません。社会のニーズを見失って独善的になり、将来的にあまり意味のない領域や、誰もそんなもの必要ないと思っている分野でいくら頑張っても無駄でしょう。イノベーションとは、社会やいろいろな人が喜んでくれるような価値を創造できるものである必要があります。

自社の強みが生きる分野でイノベーションを起こす
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