DMG森精機の森雅彦社長の経営教室、最終回は「標準化」がテーマ。文化的な多様性を強みにする一方で、製品だけでなく顧客提案や組織まで標準化を進める。矛盾するように見えるが、「標準化が強さの源泉になる」と話す。その狙いは。

森 雅彦[もり・まさひこ]

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
1961年生まれ。80年私立東大寺学園高等学校卒業。1年間の浪人生活を経て、81年京都大学工学部入学。85年に京都大学を卒業し、伊藤忠商事に入社。大阪本社で繊維機械の営業を担当し、8年間働く。93年に伊藤忠商事を退社し、森精機製作所(現DMG森精機)に入社。94年取締役、99年に父の後を継ぎ、3代目社長に就任。同業の買収などを手掛け、2009年には独ギルデマイスターと資本業務提携を締結し、15年には独側を子会社化。DMG森精機の社長として手腕を振るう。
製品や顧客提案の標準化は、個々の顧客の要望に応えることを難しくしませんか。

 実は標準化をしても、多様化する顧客のニーズに応えることは可能です。むしろ標準化をした方が、我々メーカーだけでなく、顧客にとってもメリットは多いんですよ。

 私が標準化を意識するようになったのは、2000年ごろからです。最初は製品の標準化に目を付けました。きっかけとなったのは、ミルターンという1台で複雑な加工ができる機械です。

 それまでは1つの部品を加工するには、工程ごとに特徴の異なる工作機械を使わなくてはいけませんでした。ねじの溝を掘るような特殊な加工は専用の機械を使って、加工していました。

 しかし、ミルターンは工具や加工プログラムを変えることで、複数の機械でやっていた加工を1台の機械で完結することができました。機械を標準化しても、工具や加工プログラムを変えることで、顧客のニーズを満たせるようになったのです。

 これまでは顧客のニーズに対応するため、数多くの機械を用意していました。しかし、顧客のニーズに工具や加工プログラムを変えることで対応できるようになれば、機械の種類は削減できます。

 機械の種類が減れば、1種類あたりの生産台数は増え、メーカーは生産効率を高めることができます。同じ機械を何度も生産するので、失敗の確率は下がり、機械の信頼性は向上します。

 顧客にとってもメリットは多いです。万が一、機械が故障しても、交換部品が速やかに届き、機械の停止時間を短縮することができます。製品の標準化はメーカーと顧客、双方にとって、ウィンウィンの関係を築けます。

 07年ごろには、顧客提案の標準化のメリットに気づきました。その頃は、工作機械だけでなく、周辺機器や加工ツールなどを組み合わせた「フルターンキー」と呼ばれるシステム提案の案件が増えていた時期です。

 フルターンキーの案件は、営業や開発にとって負担が大きく、改善策を模索していたとき、受注した案件の中に似たような事例があることに気づいたのです。似た部分を標準化することができれば、現場の負担軽減につながり、結果として、顧客への提案力向上につながるのではないかと考えました。

製品だけでなく、顧客への提案も標準化する
●DMG森精機の標準化の考え方
<span class="g-cap">機械の種類が多く、個別仕様に対応することで提案が複雑化。見積もりを出すのに時間がかかり、製造現場にも負荷。</span>
機械の種類が多く、個別仕様に対応することで提案が複雑化。見積もりを出すのに時間がかかり、製造現場にも負荷。
<span class="g-cap">要望の多い顧客ニーズを標準化し、個別対応の割合を減らす。見積もりの負担を軽減し、製造現場も効率化。</span>
要望の多い顧客ニーズを標準化し、個別対応の割合を減らす。見積もりの負担を軽減し、製造現場も効率化。

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