(イラスト=五島 聡)

 高度成長のさなか、1960年代から現在まで自動車工場の基本的な仕組みは変わっていない。特定の場所だけを効率的に冷房するスポットエアコンの導入など労働環境は整備され快適になった。また、各作業者にタブレットが配られたりはしている。だが、工場のレイアウト、全体工程はほぼ同じだ。

挙母工場ができた当時のレイアウト図。自動車の製造工程要素が一覧できる。現在は工場間での分業が進んでいる
自動車工場のしくみ

 では、自動車ができるまではどういった流れになっているのだろうか。トヨタ生産方式を理解するには頭のなかに自動車工場の全体図が必要だろう。

 自動車の製造工程は大きく3つにわけられる。

①車両製造工程
②エンジン製造工程
③樹脂部品成形工程

 車両製造工程では車体(ボデー)の部品の製造に始まり、完成車までを作る。ちなみに、車体をボデーと呼ぶのはトヨタ独特の呼称で、同業他社ではボディと言う。

 エンジン製造工程は車の心臓であり、多種類の部品の集まりであるエンジンを作る。できあがったエンジンは組み立てラインで車体に載せる。

 樹脂部品とはバンパー、インパネ(インストゥルパネル=計器盤)などを言う。車にはこれ以外にも、窓ガラス、タイヤ、シート、ライト、カーナビといったものが必要だけれど、こうしたものは協力工場が製造したものが輸送されてきて、組み立てラインで合体する。

 車両製造工程は5つの工程からなる。プレス、溶接、塗装、組み立て、検査。

 エンジン製造工程は4つだ。鋳造、鍛造、機械加工、エンジン組付けである。

 樹脂部品成形は成形と塗装の2工程だ。

 車両製造におけるプレスとは自動車用鋼板を巨大なプレス機で上下からがっしゃーんと挟み込んで押しつぶし、ルーフやドアなどボデー用の部品を作ること。溶接工程ではプレスされた部品を溶接して車の形状にする。いまはロボット溶接がほとんどだ。塗装は文字通りボデーが錆びないよう、また見栄えをよくするよう塗装を施すこと。

 エンジン製造の場合、鋳造、鍛造というふたつの部品作りの工程がある。

 鋳造は複雑な形状の製品を作る時の方法で、エンジンブロックは鋳造だ。以前は鉄製だったが、いまではアルミ製が多くなっている。

鍛造プレス群(挙母工場、1958年頃)(写真提供=トヨタ)

 鍛造は強度のいる部品を作る。鋳造は溶かした金属を型に流し込むことだが、鍛造は棒状などの材料をハンマーやプレス機で叩いたり、型打ちして作ること。叩かれた鉄は金属組織が稠密になり強度が増す。鍛造部品にはカムシャフト、クランクシャフト、ピストンとクランクシャフトを結ぶコンロッド(コネクティングロッドの略)といった高速で長時間の運動に耐えうるものがある。

 鋳造部品、鍛造部品を切削加工するのが機械工場で、それを合わせるのが組付けだ。

 組み立てラインでは塗装されたボデーにシート、ハンドル、エンジンなどすべてを取り付けて車を完成させる。その後、検査を経て車はユーザーに届く。