4Sから

 友山はがみがみ叱ったり、「こうしてください」とは言わない。黙って4Sに着手する。

 「整理、整頓、清潔、清掃。生産性が上がらない工場は整理されていないから、物がどこにあるかわからない。まずは一緒に、品物の型をきれいに並べて、印をつけて整理する。

 それから床にペンキで色を塗り、歩行帯を作る。ふたりだけの工場なんですけれど、人間って、歩行帯を作ると、ちゃんとそこを歩くようになる。不思議なもんですね。

 黙々とやっているうちに、話をするようになって、お母さんから『お茶にしましょうか』と呼ばれる。昼飯も一緒に茶の間で食べるようになる。それからですよ、私たちの仕事は。掃除を一生懸命していたら、信頼されるようになる。関係が構築されたとわかった瞬間、一日でドンと変える」

 彼がやったことは次のような順番だった。

①予測が大事

 お父さんとお母さんがつねにアップアップしていたのは得意先がオーダーを細かく変更してくるからだった。ふたりが一生懸命、仕事をしていると、電話がかかってきて「数を増やしたい」あるいは「減らしたい」などと言ってくる。直前の変更に直面するのが中小企業の宿命だ。何度も変更が繰り返されたので、お父さん、お母さんは10個の注文にはつねに12個なり15個の部品を用意していたのである。原料は増えるし、ムダな手間がかかる。

 そこで「予測しよう」とふたりに言う。得意先の担当者と連絡を密にする。担当者に本当は何個、いつまでに必要なのかを何度も確認して、ムダな数を作らない。予測の精度を上げていって、ムダな仕事を減らす。

② 在庫を減らす

 整理整頓して、在庫を減らす。そのうえでリードタイムを短くする。5日間のリードタイムで作っていたのを3日間にするために段取りを変えたり、小刻みに作る体制を整える。

③ パターン生産の導入

 パターン生産とはAをここまで作ったら、Bを作り、しかるのちにCを作るというパターンを決めること。部品の種類が違っても同じ順番で生産する。生産の仕方を効率的に変える。

④ 一つ一つのパレットにかんばんをつける

 かんばんをつけることで、生産量をコントロールする。それまで1週間のロットで作っていた部品を1日のパターン生産で作るようにする──。

 要はトヨタ生産方式の普及に努めた大野耐一が初期のトヨタ工場でやったエッセンスを小さな職場に適用することだ。整理整頓するだけで、仕事ははかどるから、結果は出る。すると、お父さんもお母さんもやる気が出てくるから、「もっと教えてください」と言うようになる。

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