(イラスト=五島 聡)

 友山茂樹(現・専務役員)が生産調査室にいた時代、もっとも忘れられないのが、小規模な協力企業にカイゼンに行った時のことだ。

小規模なカイゼン

 協力会社のうち、ティア1と呼ばれるのはデンソー、アイシン精機といった巨大な協力会社で、部品はトヨタに納める。ティア2以降には、デンソーなどのティア1の企業に製品を納める会社や、特殊な品物だけを作る小規模な会社が数多くある。

友山茂樹が生産調査室時代に手がけたトヨタ生産方式によるカイゼンは、大規模な協力工場にとどまらない。夫婦だけで営む小さな工場にも、大野耐一が初期のトヨタの現場で取り組んだエッセンスを適用し、一緒になってカイゼンを実施してきた(写真=森田 直希)

 生産調査室がトヨタ生産方式を協力会社に導入する場合、ティア1に限らず、上流までさかのぼってカイゼンしないと、部品納入のタイミングは平準化しない。そこで、お父さん、お母さんだけが働いているような小さな工場へも無償で指導に行くのである。

 彼が出かけて行ったのはインストパネルの成型品を作る従業員ふたりの会社だった。ふたりとはお父さん、お母さんで、たまにサラリーマンをやっている息子が手伝いに来る工場(こうば)である。

 初日、訪ねていって扉を開けたら、憂鬱そうな顔をしたお父さんとお母さんが立っていた。夫婦は「トヨタから指導員が来る」というだけで、怒られるんじゃないかとびくびくしていたのである。

 内部の様子を見ると、プラスチック部品の成型機が真ん中に置いてあって、仕掛かり品、完成品がいくつかに分けて置いてあった。当初はちゃんと整理されていたのだろうけれど、オーダーの変更があるたびに、できあがったものをさまざまな場所に押し込んでいたから、足の踏み場もない状態だった。

 「在庫をなくす」「小ロットで生産する」ことは、頭ではわかっていたのだろうけれど、得意先のオーダー変更に振り回されて、目の前の仕事を片付けるので精いっぱい…。

 しかし、世の中の小規模な工場はどこでもそんな感じではないか。