前回までのあらすじ

 戦後、商人の道を歩みだした藤田俊雄は、商売の師でもあった異父兄の貞夫の急逝に伴い、ヨーシュウ堂の社長になった。店は洋品店から食品も扱うスーパーマーケットへと成長したが、俊雄は今後、進むべき道に悩んでいた。答えを求めて、俊雄は、戦勝国であり流通の先進国である米国へ視察旅行に出かける。その機内で、俊雄は焼け跡で会ったギザ耳の男と運命の再会を果たした。

 「あんたは相変わらず人がええですなぁ」 仲村は少し呆れた風で「戦後なんか終わっとらへん。みんな安い物を買いたいんです。たらふく食べたいんです。1円でも安く売ることが、ワシの仕事やと思ぅてる。ワシは、商売をやるつもりはなかったけど、やりはじめたらこんなに面白いもんはない。ワシがちょっとでも気い抜いたら、客は逃げるし、儲けも出ん。しかし必死で、客は何を考えてるんやろと工夫をしたら、客が店に溢れるんですわ」と言い、「なあ、あんたには朝日をもろぅた恩があるけど、商売は戦争やと思います。東京に行ったら、容赦のう勝負しようやないですか」

 俊雄は、勢いに押される形で頷くしかなかった。