藤田俊雄は母とみゑが小さな食料品店を切り盛りする姿を見て育った。鉱山会社に勤めたが、戦時中は徴兵され、罪のない人の理不尽な死を目にする。敗戦後、俊雄は生き残った人間としての生き方に悩む中で一冊の本に出合い、商人になると決意。モノ不足の中、異父兄の貞夫が営む洋品店「洋秀堂」でまっとうな商売を学ぼうとする。ある日、俊雄の商売に対する甘さを貞夫が激しく叱った。
──地主根性……。
俊雄にとってこれほどこたえる言葉はなかった。勝一のようにとみゑを苦しめる存在にだけはなりたくないと思っていたのだが、いつの間にか、自分の中の勝一が目覚めようとしていたのだ。
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