異父兄の貞夫が経営する洋品店「洋秀堂」で働く俊雄は、母とみゑが小さな食料品店を切り盛りする姿を見て育った。昭和19年、鉱山会社に勤めていた俊雄は徴兵され、目の前で仲間や罪のない人が命を失う体験をする。敗戦後、生き残った人間としていかに生きるべきかを考えた俊雄は、『一商人として』という本と出合い、商人となることを決意。物不足の時代、俊雄は仕入れに奔走する。
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──昭和21年11月3日午前11時……。
俊雄は日本橋の問屋へ足袋の仕入れに来ていた。足袋は仕入れる都度、飛ぶように売れた。畳の上で履くものだが、中には地下足袋のように靴代わりにする人もいた。戦火で焼け出され、まともな住環境にない人たちにとって足を温める貴重なものが足袋となっていたのだ。
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