前回までのあらすじ

 流通業界に名をはせる経営者となる藤田俊雄は、小さな食料品店を切り盛りする母とみゑの姿を見て育った。両親の離婚に伴い、異父兄の貞夫が営む洋品店に母とともに身を寄せた俊雄は、成長し鉱山会社に就職するが、徴兵される。

 戦後、生き残った者の責任を自らに問いかけた俊雄は『一商人として』という本との出合いをきっかけに、商人になることを決意。異父兄の店で働き始めた。

「なんだ坂、こんな坂、なんだ坂、こんな坂……」

 童謡の汽車ぽっぽの一節を歌うのだが、うめき声にしか聞こえない。