俊雄は、とみゑがいずれ勝一と別れ、川越を離れる覚悟を決めていたと思っていた。そうなったら、頼りになるのは貞夫だ。だから、貞夫を一人前の商人に育ててもらおうと、自分の店から出し、洋品の商売で成功している弟の武秀に預けたのだ。貞夫には商才だけでなく、生きるために必要な真面目さ、必死さがある。それさえあれば、必ず武秀のところで育ってくれるだろう、そう考えたに違いない。