実演販売、大量に盛る

 例えば売りたい調味料を使ってチャーハンを作り、配布する。グラノーラの販売ではアーモンドミルクをかけ、ドライフルーツを載せるなど食べ方を提案する。「通常の試食の販売員は毎回行く店舗や売る商品が異なる。当社はコストコ専業なので商品を知り尽くしている」とCDS日本法人の山田修社長は言う。時にはワゴン車やカウンターを設置する大げさな仕掛け。チーズやヨーグルトは大量に盛る。見ても食べても楽しい実演販売をすると売れ行きが通常の8倍になることもあるという。

 景気は悪くないから、高付加価値や高品質をうたい、価格競争と一線を画そうとする小売業は少なくない。一方、コストコの低価格路線は今後も鮮明だ。日本法人のケン・テリオ社長は「日本で100店舗を目指したい」と言う。単純計算すれば売上高は2兆円に迫り、食品を主力とする小売りではイオン(売上高8兆3900億円)やセブン&アイ・ホールディングス(同6兆300億円)に次ぐ3位グループをうかがう。

 ただ、日本は少子高齢化が進み、消費は伸び悩む。扱い品目を絞り込むコストコの販売戦略では、生活に必要なすべての品はそろえられない。テリオ氏の拡大路線は明快だが、高齢化社会への処方箋は見えにくい。米アマゾン・ドット・コムなどネット通販の勢いが増し、低コスト化が進めば、 価格優位性が保てるかという課題もある。

 「良い品をどんどん安く」という小売業の鉄則を貫いたことが、今の成功を導いた。今後も米国の手法の水平展開で、移ろう日本市場に対応できるのか。成功モデルゆえに変化に慎重にならないかが気がかりだ。

INTERVIEW
日本法人のケン・テリオ社長に聞く
ネット通販に参入、100店舗体制を目指す

 コストコは日本市場で、毎年非常に高い成長率を見せています。日本に進出した1999年、多くのメーカーと直接取引ができたことがその背景だと思っています。高品質な商品を低価格で販売することが可能になりました。最初は多くの取引先から「これまでの商慣習と異なるので絶対に無理」と断られましたが、「取引すれば、世界のコストコに製品が提供される可能性もあり、互いの成長につながる」と説得しました。

 今も「良い商品を低価格で販売する」ことを守り抜くために経営者として徹底した現場主義を貫いています。新製品はすべて点検します。先週は1週間で東京、千葉、川崎、広島、北九州の店を回り、現場をチェックしました。

 競合の様子も観察して勉強します。日本の小売業とは競争関係にありますが、やはりアマゾン・ドット・コムは偉大な企業。ある意味でモンスターだと思います。コストコも日本で来年夏にはインターネット通販を始める予定なので、アマゾンからもしっかり学んでいきたい。

 ネット通販は実店舗やアマゾンと差別化し、専用商品を販売する予定です。ビジネス向けの商材や家に持ち運べないほどの大きな商品を扱うつもりです。製品を試す実験の場と捉え、オンラインでよく売れた商品を店舗で売ることもあり得ます。

 進出当初は日本のメーカーや顧客の信頼を得るのに時間がかかりました。今は信頼関係がしっかり構築されています。今後も日本で出店を続け、2030年までには50店舗、将来的には100店舗まで増やしたいと考えています。(談)

(飯泉 梓)

日経ビジネス2018年12月3日号 56~59 ページより目次
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