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 直接取引は大きなサイズの商品を安値で売るという事業モデルの強化にもつながった。メーカーは大量に買い入れるコストコとの取引を増やそうと、共同でオリジナル商品を開発した。3kgのボディーソープや500g入りのポテトチップスは欧米サイズを持ち込んだわけでも業者を対象としているわけでもない。コストコとメーカーが、輸送コストや包装にかかる費用を計算し、1g、1枚当たりで最も安くできる方法を考えて商品を開発している。

 低価格の秘訣はほかにも数多い。例えば徹底したローコストオペレーション。できるだけ従業員を少なくして店舗を運営する。パレットで大量に製品を置くことで並べ直す頻度を下げている。POPがほとんどないのもこのためだ。売上高に対する販売管理費比率を見ると他の小売業との差は歴然としている。コストコは9.8%で、イオンリテールの31.8%、イトーヨーカ堂の24.9%を大きく下回る。これによって利益は小売業としては安定した水準になる。

低価格で販売し、販管費は削っている
●米コストコと日本の小売りの経営数値の比較
注:直近の期、イオンリテールはイオンの総合スーパー部門

深夜に商品を陳列

 平日の昼間、1万m2の広さにもかかわらず、売り場で見かけた従業員はレジ担当者も含めて20人弱だった。日中の営業時間に売り場に人がいるのは、宝飾・家電売り場、医薬品や補聴器・メガネ売り場、受付カウンターくらいだ。

 通常のスーパーでは、売り場ごとに品出しや陳列をする担当者がいるため、10分の1の大きさでも30人近くの従業員が存在する。

 閉店後の午前2時。コストコ店舗に明かりがともる。15人ほどの従業員がフォークリフトを操作し、商品を次々と店頭に並べていく。「お客様がいない深夜に集中して作業し、商品の陳列をほぼ終わらせる」(川崎倉庫店の増田亜紀子店長)ためだ。人員を減らし、作業時間も短縮できる。

 米コストコの売上高は1415億ドル(約16兆円、2018年8月期)。デロイトトーマツコンサルティングの調査によると米ウォルマートに続き、小売業で世界2位の規模だ。日本法人のコストコホールセールジャパンは売上高など経営数値を公開していない。元コストコ社員でコンサルティング会社、プロ・ムナード・ジャパン・インクを経営する佐藤生美雄氏の試算によると「日本の年間の売上高は4800億円程度、1店舗当たり年間180億円以上を売り上げている」という。日本法人の営業利益率は米国本体の3.2%とほぼ同じとみられている。

上=試食コーナーは10カ所近く、中=改良を重ねてヒットさせたサーモン、下=筒状の装置でレジにたまったお札を吸い上げ人手をかけずに回収する(写真=3点:北山 宏一)

 低価格というだけならウォルマート傘下の西友もローコスト運営で実現している。コストコは包装、物流の無駄を排除することを追求した店づくりをさらすように顧客に見せつけた。「だから安いのか」と納得して買い物をしてもらう。生活圏外から買いだめに来る客が多く、いつもと違って安く、大量に食材や日用品を買い込む非日常を演出した。「この店に来ると、つい買いすぎてしまう」。川崎の店にいた60代の主婦は月に1度は来店するという。

 競合他社に比べて唯一、売り場でコストをかけているのが試食販売だろう。時間帯によっては10カ所以上でパンやケーキ、チョコレートを配る。手掛けるのはクラブ・デモンストレーション・サービシズ・インク(CDS)というコストコ専業で実演販売をする会社だ。食品メーカーの担当者からは「提案力のレベルが高い」という声が聞かれる。

日経ビジネス2018年12月3日号 56~59 ページより目次