日本進出時から一貫して取り組むサプライチェーンづくりの効果が大きい。問屋を通さない直接取引の米国流ビジネスにより、中間マージンを削減するだけでないメリットが出た。メーカーが縦102cm、横122cmの専用のパレットに商品を並べてコストコの倉庫に運ぶと、店頭にそのまま持ち込んで並べてしまう。倉庫を経るたびに梱包し直す手間を省き、在庫負担も軽くなる。

<span class="fontBold">メーカーは「パレット」と呼ばれる専用の台に載せ、コストコの物流センターに出荷。</span>
メーカーは「パレット」と呼ばれる専用の台に載せ、コストコの物流センターに出荷。
<span class="fontBold">センター内でもパレットごとに仕分けし、店頭に運ぶ</span>(写真=北山 宏一)
センター内でもパレットごとに仕分けし、店頭に運ぶ(写真=北山 宏一)

 日本の小売り大手も近年、直接取引を増やしているものの、ビジネスの主流ではない。多品種の製品を安定供給する問屋機能のメリットもあるうえ、長く染み付いた慣行を変えるのは難しいからだ。メーカーがコストコとだけ直接取引をすれば、ほかの小売店が嫌気しかねない。かつて同じように直接取引を望んだカルフールもメーカーの反対に遭い、踏み切れなかった。

メーカーが出荷した状態で店舗に配送
●一般的な小売業とコストコの物流の仕組み
メーカーが出荷した状態で店舗に配送<br /><span>●一般的な小売業とコストコの物流の仕組み</span>
<span class="fontBold"><span class="wf">コストコは自社のセンターで物流を完結。パレットのまま店舗に運び余計なコストがかからない</span></span>
コストコは自社のセンターで物流を完結。パレットのまま店舗に運び余計なコストがかからない

「もうけすぎない」に共感

 コストコが慣行を打破してメーカーと特別な関係を築くには、業界への配慮が欠かせなかった。20年前、1号店の出店に際し、都内の立地を諦めて福岡県糟屋郡に切り替えた。既に米国ではコストコ旋風が吹き荒れていた。日本でできるだけ競合を刺激しないよう、大市場を避けてひっそりと出店し、メーカーにコストコ流のビジネスを徐々に浸透させていった。

 扱う商品のサイズが大きいことや品目数が少ないことを引き合いに、他の小売店とは競合にならないと説明を繰り返したという。「良い製品で販売実績を上げれば、世界の他のコストコでも扱えるようになる」とメーカー側のメリットも訴えた。

 コストコの独自ルールもメーカーの共感を呼んだ。製造から販売までプレーヤーが異なる小売業は、サプライチェーンの中で誰が利潤を多く取るかのせめぎ合い。その中でコストコは「自分たちがもうけすぎない」という姿勢を示し続けた。長南フーズ商品本部長は「コストコでは一定以上の利益を乗せないと社内規定で決まっている」と話す。実際、日本事業と大差がないという米コストコの利益構造を見ると、粗利益率は11%と、イオンのスーパー部門であるイオンリテールの26.4%、イトーヨーカ堂の29.6%と比べて圧倒的に低い。会費による収入がないとビジネスが成り立たないほど安く売っている。

 「コストコさんは自分たちだけがもうかればいいと思っていない。だからウィンウィンの関係を構築できる」。直接取引に応じるカルビーのコストコ担当者は言う。メーカー各社の信頼を得て、20年前に7割だった直接取引の割合は今では9割に達している。

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