外資小売業の撤退が相次ぐ中、日本に進出して20年間で26の大型店舗を展開している。会員制で、商品1つのサイズは巨大。品目数は絞り込む。日本の流通の常識外の店づくりに取り組んできた。他社を低価格で圧倒するためムダを徹底的に省く独自の手法は、日本の消費者にどこまで浸透したか。

11月中旬、川崎市にある米コストコホールセールの店舗に入ってみた。照明は薄暗く、音楽もかかっていなければ、店員の呼び込みもない。「パレット」と呼ぶ質素な陳列台に、日本の家庭になじまない巨大サイズの商品が無造作に積み上げられている。
日本のスーパーの売り場の多くでみられる軽快な音楽、色鮮やかなPOP、豊富な商品群という共通項と対極にあるようだ。会員制で個人の年会費は4400円かかるのに、日本に進出して20年間で登録者は600万人を超えた。日本では店を閉鎖したことがなく、店舗網は札幌から北九州まで26に増えた。ゼロから積み上げた年間売上高は5000億円に迫るとみられ、日本のスーパーの売上高ランキングでトップ10の水準に達している。
●コストコの日本での店舗数の推移

直接取引を持ち込む
大都市の一家4人を想定した世帯モデルは崩壊し、単身や独り暮らしの高齢者が増える日本市場。総合スーパー(GMS)や食品スーパーはいずれも苦しい。仏カルフールや英テスコといった大手外資系小売りは市場の特異性を捉えきれず撤退していった。この間のコストコは華美を排してコストを下げ、消費者が割安に感じる売り場づくりに集中した手法が奏功している。
「各カテゴリーのシェアトップ商品、または安さなどでトップを上回る2位メーカーの商品を中心に扱っている」。商品購買部の長南昌彦フーズ商品本部長は言う。1店舗の売り場面積は1万m2と食品スーパーの平均の10倍以上だが扱う品数は3500品目とコンビニエンスストア並み。GMSの3分の1にも満たない。1品当たりの販売数量を増やすことで仕入れ価格を抑えるためだ。ある食品メーカーの担当者は「他社に比べ、1割近くコストコに安く卸している」と明言する。これによりコストコは「商品を市場価格より20%ほど安く販売している」と説明する。


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