工作機械業界で、英国の名門高級車メーカー「ロールス・ロイス」になぞらえられる地方企業。精度と耐久性への徹底的なこだわりと、長い時間をかけた人材育成が高い評価を生んだ。さらなる成長を目指すが、そのスピードと企業文化維持の二律背反が立ちはだかっている。

工場に据えられた製造中 の工作機械「YBM 8T- 63TT」。ラインナップの中 では中型クラス。人手で丁 寧に組み立てる(写真=森田 靖)

 工作機械業界には「母性原理」という言葉がある。「金属部品は、それを加工した機械(マザーマシン)の性能以上に高精度に仕上がることはない」というものだ。それゆえ工作機械はことのほか精度が重要なのだが、安田工業の製品は、工作機械を造るために同業メーカーが購入している、いわば「マザーマザーマシン」だ。

高い加工精度を求める顧客を開拓し成長
●安田工業の社是「最大より最高」を表すピラミッド

 岡山県里庄町に本社と工場を置く同社は、直近の売上高が165億円と大きな企業ではない。しかし、同社の社是は「最大より最高」。右図のように、市場のピラミッドの中で最も高精度な市場に絞って製品を投入している。例えば自動車なら、試作車やF1など、性能を極限まで求める部品製造用の機械を造る工作機械だ。ちなみに、加工できる精度は最高で5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル。主要製品の「YBM 640V Ver.IV」のカタログ価格は3150万円だ。