2018年3月期、マツダのグローバル販売台数は160万台(前年比3%増)と過去最高を記録する見込みだ。
下のグラフの通り、同社の業績は13年3月期に赤字体質から脱した。何が変わったのか。それは「仕事のやり方」だ。新規事業や新しい販売方法の導入、あるいはM&A(合併・買収)などではなく、日々の仕事の方法論を変えることで、魅力的な製品を作り出し、ブランド価値を向上させ、コストも低減した。復活のカギは「モノ造り革新」という、業務プロセスの変革だったのだ。
この変革を主導したのが、研究開発部門を率いてきた金井誠太マツダ会長だ。先々の技術動向を見据えながら、将来、商品化する新車をまとめて企画する開発手法を確立、マツダに変革を呼び込んだ。
自らの仕事を通して、どのように変革への意思をはぐくみ、仕組みづくりの準備を重ね、社内に働きかけていったのか。その「変革への挑戦」を金井氏が語る。第1回は「モノ造り革新」がもたらした成果が製品とブランドにどう表れているのかを紹介する。

デミオ、アクセラ、CX-3、CX-5、ロードスター、アテンザ……。いま発売されているうちの主力車種を、右上の写真でご覧になってどうでしょう。
よくいただくご意見が、「全部似ていて、『マツダだ』というのは分かるけれど、車ごとの名前が分からない」というものです。あなたもそう思われますか?ならば、それで結構、金太郎飴で大正解なんです。
1974年にエンジニアとして入社して以来、うちのクルマを金太郎飴にするために、ずっと考えて働いて、40年以上かかってやっとここまで来た、そう言ってもいいかもしれません。
こんな話をすると、ちょっと当時のことを思い出してしまいますね。
「新入社員、いいもん見せちゃる」
入社早々、先輩が試作工場で私にのぞき見させてくれたのが、「赤いコスモ(コスモAP)」でした。「おおっ、かっこいいな」と思って、わくわくしたのを覚えています。75年の10月に発売され、大ヒットになりました。
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