米同時多発テロが転機

 従来の爆発物検査では、X線検査装置で持ち物の中身を調べたり、カバンの持ち手などの表面を専用の布で拭き取り、成分検査装置で調べたりする必要があった。1人当たりの検査に最低でも1~2分はかかった。

 日立の探知装置では時間を短縮し、「全ての人を対象にした検査が可能になった」(花見英樹・制御プラットフォーム統括本部セキュリティセンタ長)。装置の重量は200kg程度。当初は原子力発電所やデータセンターの入退場ゲート向けとして開発されたが、競技会場などでの設置も可能という。

 この探知装置は、文部科学省が2007年に立ち上げた安全・安心科学技術プロジェクトの採択案件。2001年の米同時多発テロ以降、政府の後押しを受けながら不審物探知システムの開発が進められている。

 マスプロ電工(愛知県日進市)も、同プロジェクトの採択を受けた企業の一つ。テレビ向けの受信アンテナを主力とする同社が研究開発したのは空港の保安検査場などで使用されるボディースキャナー装置。液体爆弾やプラスチック爆弾、セラミックナイフなど、通常のX線検査装置では見つけにくい危険物を服の上から検知できる。

 装置では人が放出するミリ波帯(波長1~10mm)の熱に関する信号を画像化する。ミリ波帯の信号は衣服を通過できる半面、プラスチックや液体などでは遮断されやすいため、衣服に危険物を隠し持っていた場合、モニター画像上から異常が検知できる。これまで、主に海外の軍事用途向けなどに研究が進められてきた技術だ。

 従来、同様の不審物検査は警備員が服の上から手で触る「触手確認」が主流だった。ただ、1分程度の時間を要するため全ての人への実施は難しい。

 さらに「宗教的な理由や性別などの問題で、触手確認を嫌がる人も多かった」(高木尚樹・カメラ事業プロジェクト副部長)。装置の実用が広がれば、こうした問題も解決に向かう。

 既に成田国際空港で実証試験を行ったほか、今年開催された伊勢志摩サミットでは携帯可能な簡易タイプが警備に使われた。

 マスプロ電工は技術の研究を進めるほか、技術交流する米ブリジョット・イメージング・システムズ製の装置を国内で代理販売している。