水素を多く含み、燃えても二酸化炭素を排出しないアンモニア。腐食性などが課題だったが、技術革新でこの「水素長者」が燃料として使えるように。石炭火力発電所や燃料電池などで、既存エネルギーを置き換える動きが出始めた。

アンモニアを直接燃料として活用することに成功した中国電力の水島発電所(岡山県倉敷市)

 中国電力は7月、エネルギー業界の大変革につながる実験を成功させた。同社の水島発電所2号機(岡山県倉敷市)で、石炭燃料に「アンモニア」を一緒に混ぜて燃焼させたのだ。実際の大型発電設備で成功したのは、国内でも例を見ないという。

 実験では、4万世帯分の電力需要に匹敵する12万キロワットの発電時にアンモニアを投入しても、問題なく稼働することを確認できた。この際、発電量の0.8%(1000キロワット相当)をアンモニアで賄い、石炭を減らした分だけCO2(二酸化炭素)の排出量を削減できたという。

水素社会のビジョン
●内閣府による主な工程表
2015
~20年
燃料電池車、燃料電池コージェネレーションの普及開始
アンモニアなど「エネルギーキャリア」の利用研究
2020
~30年
水素発電の導入
エネルギーキャリアなどによる高効率発電の実証
2030年
大規模水素発電
日本の水素関連産業が世界を席巻

 日本政府が地球温暖化対策の柱として掲げる「水素社会」。CO2の排出抑制に向けて、家庭や事業所で幅広く水素エネルギーを活用する取り組みだが、2030年の実現に向けては高い壁が立ちはだかっている。水素の運搬や保管などで、新たな専用インフラの整備が必要になることだ。そこで一定の水素を含有しつつ、燃料としても効率的に扱えそうな「エネルギーキャリア」という物質が脚光を浴びつつある。

 その代表が化学式「NH3」のアンモニアだ。きつい臭いのイメージが一般的だが、構成するのは水素と窒素のみ。化石燃料とは異なり、燃焼してもCO2が出ない。常温で比較的容易に液化でき、体積当たりの水素の含有密度は液体水素の1.5倍前後と濃い。その分、エネルギーを効率的に運搬できる。

 有機ハイドライドもエネルギーキャリアとして期待されるが、水素密度などでアンモニアが優位とされる。だからこそ中国電は、「水素長者」ともいえるアンモニアの活用に挑んだのだ。

 アンモニアは主に肥料の原料として使われ、国内の使用量は年に100万トン程度。国内で一定量を生産でき、供給網もほぼ確立されている。石油や石炭などの既存燃料と置き換えることができれば、CO2の抑制効果は大きい。