目の不自由な人が転落するなど、駅ホームでの人身事故が相次いでいる。安全で快適な鉄道網実現にはホームドアの普及促進が不可欠だ。重量や設置費用などの課題を乗り越えるべく、開発が急ピッチで進む。
都心部を中心に、一部の駅で見かけるようになった「ホームドア」。線路とホームを遮断することで、重大な結果を招く人身事故を防ぐ。目の不自由な人の転落事故が起きるたびに、社会的な関心が高まってきた。
国土交通省は乗降客数が多い駅と、目の不自由な人からの要望が多い駅から優先的に整備する方針を掲げる。2015年度末には665駅に設置済みで、2020年度末には800駅を目指す。だが1日10万人以上が利用する全国251駅については、そのうち約3割の77駅にしか設置されていない。思うように整備が進んでいないのが実情だ。
最大のネックは設置コストだ。一般的な駅なら数億~十数億円かかる。国は補助金を出しているが、設置主体の鉄道会社が及び腰となっている。
コストがかさむ原因ははっきりしている。ドアは非常に「重い」のだ。
現在の主流である扉が横から滑り出すタイプの場合、1セット(1開口部)の重量が400kg前後。倒れないようにする基盤固めなど様々な作業が必要となる。土を盛って舗装しただけの古い駅の場合、ホームを作り替える規模の土木工事になることも珍しくない。
据え付け作業も大変だ。重くてかさばるため、駅のエレベーターなど通常の経路では搬入できない。そこで深夜に、車両基地などから専用列車で運び込む。ホーム補強を中心に積み重なったコストは莫大なものとなる。
据え付け後は場所が固定され扉の位置が決まる。これも新たな問題を引き起こす。運転士の技量で停止位置に多少の誤差が生じてしまう駅や、ドアの数・位置が異なる複数種類の列車が入ってくるホームには不向きだ。複数の鉄道会社による相互直通運転では、車両が不統一なことが少なくない。
車両のドアとホームドアの位置を合わせるには、「TASC(定位置停止装置)」と呼ばれる自動ブレーキ装置の導入が有効だ。これもコスト増の要因となる。
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