「呼吸」が劣化を招く

 日本郵船は、コンテナ内の大気成分を調整することで青果物の鮮度を保持する技術を国産食材の輸出に活用している。

 使用するのは、「CAコンテナ」と呼ばれる特殊なコンテナだ。CAとはControlled Atmosphereの略で、冷蔵・冷凍機能に加えて、内部の酸素や二酸化炭素濃度を調整する機能も持つ。

 青果物が劣化するのは、収穫後も人間と同じように、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す呼吸を続けているためだ。呼吸の際に青果物の糖分が使われ、劣化する。となると、空気中の酸素濃度を下げれば、呼吸が極端に減って劣化を抑えられる。CAコンテナは、この特徴を利用するものだ。

 例えば、リンゴなら、0度の温度で貯蔵すると呼吸量は常温時の10分の1に下がるが、さらに酸素濃度を低くすると20分の1まで抑えられるという。

 このCAコンテナではまず、外から取り込んだ大気から高濃度の窒素を作り出し、コンテナ内に送り込む。すると内部の窒素濃度が上がり、結果として酸素濃度が下がる。大気は窒素78.1%、酸素20.9%、二酸化炭素0.04%で構成されるのに対し、窒素投入後のコンテナ内は、窒素90.0%、酸素5.0%、二酸化炭素5.0%といった環境に変わる。

 鮮度を保つのに適した酸素濃度は青果物によって異なる。そのため現在は、「全国の農協などが輸出に向けて最適な輸送条件を調べている段階」(日本郵船グループの研究開発部門、MTIの田村健次取締役)。データが出そろえば、CAコンテナの需要が本格化すると日本郵船は見ている。

 同社は2015年10月、全長が20フィート(6.096m)で最大積載量30トンのCAコンテナを20本導入し、イチゴの輸出などに活用している。

 青果物の呼吸を抑える方法には、鮮度保持フィルムの袋を使うMA(Modified Atmosphere)包装と呼ばれる手法もある。国内の流通では、劣化の早い枝豆などの包装に既に使われている。

枝豆は傷みやすい青果物の一つ
●鮮度保持フィルムの利用例
枝豆は傷みやすい青果物の一つ<br /> <span>●鮮度保持フィルムの利用例</span>
<b>上の2枚の写真は、枝豆を鮮度保持フィルムで包装した場合と、一般的なビニール袋で保存した場合の比較。下の写真は、同フィルムの直径70マイクロメートルの穴</b>
上の2枚の写真は、枝豆を鮮度保持フィルムで包装した場合と、一般的なビニール袋で保存した場合の比較。下の写真は、同フィルムの直径70マイクロメートルの穴

 このフィルムの国内シェアトップが住友ベークライトだ。70マイクロメートル(マイクロは100万分の1)などの小さな穴を袋に開けて、袋内の酸素量を調整する。穴の数は青果物の呼吸量によって変わるが、多いもので1袋当たり数十個以上になる場合もあるという。

 完全な密封状態にしないのは、袋の中から酸素がなくなると「青果物のエタノール化が進み、生野菜でも漬物のような臭いが生じる」(住友ベークライトの白本勝久P-プラス開発部長)ためだ。同社では、青果物の呼吸量に応じて穴の直径や数の異なる鮮度保持フィルムを約50種類、用意している。

 海外への輸出では、輸送にかかる時間も国内に比べてはるかに長いため、青果物のわずかな呼吸でも袋の中に結露が生じる場合がある。そこでフィルムに、水の構成要素である水素と酸素の分子と引かれ合う分子を含んだ素材を採用した。この素材を使うと、袋内の余分な水分がフィルム内に吸収され、そのまま外部へ排出されるという。このフィルムは今年8月から、静岡産メロンをタイへ輸出するのに利用されている。

 呼吸をコントロールする鮮度保持の技術は、出荷後も呼吸を続ける青果物にだけ有効だ。一方、国産の食肉や魚介類も重要な輸出品目として期待されている。こうした食材の鮮度保持にも使えると注目されているのが、冷凍コンテナ内に「電場」と呼ばれる空間を作る鮮度保持技術だ。

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